「カネもかかる、技術もいる。でも…」 "超マニアック"博物館《国立民族学博物館》が、貴重な資料の「露出展示」にこだわる"超シンプルな理由"

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収蔵庫に入るにあたり、まずは靴を履き替える。虫をなかに持ち込まないための対策だ。なかに入ると、広いテーブルが置いてあるのが目に入った。テーブルの上には生地が広げられていて、その周りで10人ほどの人たちが何やら話し合っている。末森先生が教えてくれた。

「ここは展示準備室です。資料の観察を行うための部屋です。収蔵庫内にはスペースがないので、じっくり見たい資料をここに持ってきて観察するんです。必要な資料をこうして観察する作業を『熟覧』と言います」

そばで熟覧の様子を見せてもらった。この日集まっていたのは中央アジアをフィールドにする研究者の皆さんで、キルギス関連の資料を現地の研究者とともに熟覧していた。

この熟覧は、アーカイブにある資料の情報を強化するとともに、2026年3月から始まる中央アジアに関連する特別展「シルクロードの商人語り―サマルカンドの遺跡とユーラシア交流」の準備を兼ねているそうだ。末森先生も実行委員の一人を務めている。

こうした熟覧は日常的に行われている。館内の研究者だけでなく館外の研究者もやって来る。展示の準備でどの資料を展示するかを検討したり、新しく収集してきた資料を観察したりする。

熱心に熟覧を続ける皆さんを尻目に、展示準備室を抜ける。現れた部屋が収蔵庫である。

おおーっ、ブツ、ブツ、ブツ! すごい量だ。アイヌのものらしき巨大な像や、ピンク色のド派手な山車(だし)が置いてあるのが目に留まった。収蔵庫の天井はさほど高いわけではないが、二層構造になっている。

上のフロアを見上げると、いかつい顔をした木像が複数体こちらを見下ろしている。我々がいる下のフロアにはスチール製のラックが多数設置されている。ラックには数々の資料が置いてある。

節電しながら管理

「ここは第一収蔵庫です。第一収蔵庫は民博開館当時からあります」

この第一収蔵庫では主に大型資料を保管する。第一収蔵庫の奥には同規模の第二収蔵庫、第三収蔵庫と3つ連なっている。さらにその奥には特別収蔵庫がある。特別収蔵庫?

なんでも、収蔵庫は二つのゾーンに分けられているそうだ。一般収蔵庫と特別収蔵庫だ。両者の違いは空調管理の時間にある。第一から第七までの一般収蔵庫では空調を1日に8時間、職員が働いている時間帯に起動させる。一方、特別収蔵庫は24時間体制で一定の温度・湿度を保つ。

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