「カネもかかる、技術もいる。でも…」 "超マニアック"博物館《国立民族学博物館》が、貴重な資料の「露出展示」にこだわる"超シンプルな理由"

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「これだけ大きな空間なので、1日8時間の空調でもかなりの光熱費がかかります。春、夏、秋、冬と季節ごとに設定を変えて管理しています。東日本大震災後の節電要請をきっかけに空調の見直しもおこないました」

温度と相対湿度は相関関係がある。温度が上がれば飽和水蒸気量も増えて相対湿度は下がる。外気との温度差を考慮して、夏場は26度、冬場は22度を目安にする。春と秋は一部の収蔵庫で、空調による温度制御をおこなわずに自然の気温に合わせて徐々に変化させていく方法を採用した。

「ただ、どちらかといえば、温度よりも湿度のほうをケアしています。湿度が高くなるとすぐにカビが発生してしまいますから」

24時間体制で管理される特別収蔵庫には、銃刀剣類、絨毯、漆器、毛皮・革などが保管されている。さほど広い空間ではないので、エネルギーの消費量は限られている。

民博では他に24時間で空調管理する施設として、衣料収蔵庫とフィルムなどのメディア資料を保管する収蔵庫がある。フィルムの管理は標本資料係ではなく、映像音響係が担当している。

収納箱は職員の手づくり

第一収蔵庫を抜けて、第二収蔵庫に入る。ん? なんだか匂いが違うんだが。

「昔は収蔵庫全体をくん蒸処理してたんです。この匂いは、くん蒸処理のものとか、いろんなものが混じっているのかもしれませんね」

第二収蔵庫には目立って巨大な資料はなく、大量のスチール製のラックが整然と並ぶ。図書館の閉架書庫にはたいてい所狭しと背の高い書棚が並べられているが、あの光景に近い。ここでは書棚の代わりにラックがあると思ってもらえればいい。ラックの各段には様々な資料が剥き出しの状態で並んでいる。

しかしこの大量の資料、いったいどういう規則で整理されているのだろうか?

「第二収蔵庫では、資料を受け入れた順のままに収蔵しています。これは民博開館当初からの方針なんです。たくさんのものが入ってきて、どんどん増えていくことを想定していたからです。民博では、オセアニア収蔵庫とか、ヨーロッパ収蔵庫というように地域別で整理したり、材質別や使用目的別で整理したりはしてきませんでした」

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