【産業天気図・建設業】受注高は回復傾向だが土木で収益力低迷、建築も競争激化で「雨」空続く
建設業の産業天気図は、07年度前半、後半とも「雨」が続く。
受注高自体は回復傾向にある。国土交通省の調べでは、2007年1月~3月期の建設業大手50社の受注高は約4兆3900億円で、前年同期比6.6%の増加となった。公共関連は、予算削減が進む中で大手50社の健闘が実って同約2%増、民間はマンションなど住宅系が伸びて同約7.8%増となっている。
しかし、近年業界で問題となっているのは受注額ではなく、収益力の低迷だ。このほど建設各社が発表した08年3月期の土木工事の単体完成工事総利益率見通しを見ると、鹿島<1812.東証>で前期比2.2%ポイント減の7.4%、大成建設<1801.東証>で同1.8ポイント減の8.6%と、最大手4社(非上場の竹中工務店を除く)の平均は7.6%と前期比2.3%ポイントの大幅減少となっている。これは、昨年大手業者を中心に「脱談合」姿勢が強まり、大型官庁工事で低価格受注が頻発したことが影響している。
一方、民間の設備投資関連の需要が堅調な民間建築分野でも、劇的な利益率改善は見込めない。最大手4社の08年3月期建築完工総利益率見通しの平均は約5.4%(前期比0.4%ポイント減)とほぼ横ばいで、首都圏など大都市圏での受注競争の激しさや、資機材費の高止まりが影を落とすとの見通しが依然強い。
こうした中で、突出した強さを見せているのは長谷工コーポレーション<1808.東証>だ。07年3月期決算では連結営業利益645億円(前期比6.3%増)を叩き出し、最大手4社すべてを突き放した。マンション建築に特化している点、独自の土地情報網から採算性の高い案件を精選している点などに強みがある。今期は前期比では営業減益を見込むものの、利益水準は依然高水準。優先株の処理も順調に進み、復配への期待も強まっている。
最大手、準大手を含めて伸び悩む建設業界だが、都内の不動産売買が堅調なスルガコーポレーション<1880.東証>や、海外受注が順調なナカノフドー建設<1827.東証>など、中堅でも前向きな材料の多い会社がある。建設業界は構造的な不況の中にあるといわれるが、得意分野への特化と不採算分野・部署の削減など、生き残りのために断固とした手を打ってきた企業には薄日が差しているといえるだろう。
【鈴木謙太朗記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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