「前々から胡散臭いと思ってた」の声も…退職代行サービス「モームリ」が家宅捜索も、「退職代行」は"今後も廃らない"理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「このあっせんは、社会保険労務士法でも禁止されています。たとえば私は、時折、顧問先や金融機関からその取引先等を紹介され、労務相談や人事コンサルティングをすることがあります。このとき、私が紹介者へ報酬(紹介料)を払うと、社労士法23条の2に抵触する。弁護士法で違法なあっせん(非弁提携)として禁止しているのも同じ趣旨で、社労士法の遵守を確保し、不正行為を防ぎ、利用者の保護と社労士制度の信頼性を維持するためと思われる」

利用者も「考え抜いた末の行動」?

今回の一件は、いずれ何らかの決着がつくであろう。違法な部分があるならば正さなければいけないが、これを機に退職代行サービスが消えるとは筆者には思えない。

なぜなら現在の採用は、圧倒的な売り手市場だからだ。少子化は激しいスピードで進み、新卒、中途双方でエントリー者が減っている。一部の企業はその争奪戦で厳しい結果となり、不本意な人材を採用するケースが増えてきた。離職率が高止まりの企業もある。

中途採用市場では「転職すると、賃金が上がる」といった声がよく聞かれ、安易な転職が増えるケースが増える可能性は否定できない。雇う側、雇われる側のミスマッチが生じやすくなっている構造は確実にある。

「モームリに限らず、このサービスの利用者は一時の感情による行動ではなく、考え抜いた末のものではないでしょうか。突然の退職は問題で、それにより困る人たちもいる。しかし、上司や職場にも問題はあったのかもしれません。未払い残業や退職時の有給の消化など権利意識は高まりつつある。ハラスメントを受けたと受け止め、リベンジ退職をする者もいる」

筆者が考えるに、1社への捜索だけでこのビジネスを論じるのは無理がある。違法性のある部分も含め、ここまで広く浸透するのはそれを支える多数の利用者がいるからだ。

“無責任”とも言える辞め方に怒る人もいるであろうが、企業と働き手のあり方を見つめ直すきっかけととらえられることも、また確かだ。

吉田 典史 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

よしだ のりふみ / Norihumi Yoshida

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』(ダイヤモンド社)など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事