なぜ私たちは休めないのかー必要なのは"時間の再設計"という発想。《休息は生き延びるための基本》

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ふたつ目のカレンダー(〝理想の〞24時間/1週間のスケジュール)には、仮に自分の時間を理想に近づけると、と想像して記入してみてください。

①理想としては、睡眠は週末も含めて固定で毎日7時間から9時間です。ただ不足分は、昼寝や週末に多めに寝ることで補うことができます。

②毎日30分を〝ストレス解消の会話〞にあてましょう。ストレス解消の会話の相手がパートナーの場合、週に1度、1時間の〝現状確認〞の会話も追加します。良好な関係を維持するための基準として、研究によって推奨されています。

③週に3回から6回、30分から60分の身体活動。準備時間や移動時間も含めます。

④つながり、休息、意味、ストレス反応サイクルの完結。

⑤携帯電話の使用、ショッピング、食事の準備のような活動で、ぼんやりする休息時間に使っていないもの。心の状態を心配から落ち着いた未来設計に変えてみる。

休息の時間を増やすことで、人生の残りの58パーセントを、あなたはこれまでよりも活力に満ち、集中し、クリエイティブに過ごすことができ、周囲の人にとっても付き合いやすい人になれます。

より安全運転ができるようになり、あとから作業が増えるようなミスも減ります。そして自分のしていることを楽しめるようになります。やるべきことを把握していて、そのための時間もあります。シンプルです。わかりやすく簡単。ですよね? 当然、そんなわけありません。

簡単ならとっくにみんな実践している

そんなにシンプルでわかりやすくて簡単なら、みんなとっくに実践しています。だったら、何がこのシンプルでわかりやすい変化を、難しくしているのでしょうか?

『睡眠こそ最強の解決策である』(SBクリエイティブ、桜田直美訳)の著者、マシュー・ウォーカーは、同書のなかで、私たちが睡眠を文化的に軽視していることを指摘し、「抜本的な意識改革が必要だ。個人も、文化も、職場も、社会も、睡眠に対する態度を大きく変えなければならない」と書いています。

たとえば、学校(特に高校)は、始業時間を遅らせる必要があります。それに伴い、保護者も勤務時間のフレキシビリティーが必要ですし、雇用主も、従業員が組織の要求と家族の要求を同時に満たせるようにすることが求められます。

これは、私たちみんなが休息と健康を確保できる世界を実現するために必要な、根本的な制度改革のひとつの例に過ぎません。十分な休息をとるのは、そう簡単ではないのです。

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私たちのほとんどは、自分の体が伝えてくれようとしている声より、他人の意見を信じるように教えられてきました。なかには自分の体の声にあまりにも長く耳を傾けてこなかったので、どうすればその声を理解できるのか、ましてや信用できるのかがわからなくなっています。

しかも疲れていると、体からのシグナルは騒がしくなり、さらにメッセージを聞き取るのが難しくなります。

休息をとらないと、あなたは完全に自分自身ではありません。睡眠をとらないと、あなたは文字通り死に至ります。

そして生き延びるためだけではなく、休息は、あなたが自分の体の声を聞いて、そして信じる第一歩です。

エミリー・ナゴスキー 健康指導者

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エミリー・ナゴスキー / Emily Nagoski

ニューヨークタイムズ紙のベストセラー『私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム(Come as You Are: The Surprising New Science That Will Transform Your Sex Life)』(高尾美穂監修、小澤身和子訳/日経ナショナル ジオグラフィック)の著者。インディアナ大学でカウンセリング学の修士号および健康行動学の博士号を取得している。

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アメリア・ナゴスキー 音楽学博士

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アメリア・ナゴスキー / Amelia Nagoski

コネチカット大学で指揮の博士号(DMA)を取得。ウェスタン・ニューイングランド大学の助教授として、音楽学科のコーディネーターをつとめている。

“燃え尽き症候群予防の先へ:指揮者のための体現的ウェルネス(Beyond Burnout Prevention: Embodied Wellness for Conductors)”など、プロの音楽家を対象に、コミュニケーション科学や心理学の研究を応用した教育セッションを定期的に実施している。

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