クリニック開業3年目に「水害で壊滅状態」になった医師が"学んだこと"――「ポジティブな言葉が人を健康にする」の意味とは
そのときは「なぜ自分だけがこんな目に遭うんだろう」「患者さんにこんなに尽くしているのにどうしてこんな最悪なことになるんだろう」と思って落ち込みました。
「これからいったいどうしたらいいのだろう」と不安に駆られ、夜も眠れずに悩む日々が続いていたのです。
するとある日、どこからともなく「それでも備えよ」という言葉が聞こえた気がしました。その言葉は、絶望の淵にいた私にとって、まるで天啓のように思われました。
そして私はその言葉に突き動かされるように「こんなことではいけない。多くの患者さんのために、私自身が勇気を振り絞らなくては」と思い立ち、再び大きな災害が来ても大丈夫なように、このクリニックを大改築することにしたのです。
まず、水害が来ても大丈夫なようにエレベーターを新設して、医療機器の避難場所を作りました。水が迫ってきたらエレベーターにエコー(超音波)やレントゲンの機械を格納して、階上に上げるというシステムです。
そのためにはさらに莫大なお金がかかったのですが、私も経営者ですから危機管理は必要だと、思い切ってやりました。
しかし、病院の事務長をしていた私の父からは、「そこまでして備える必要があるのか」という苦言を何度も呈されたものでした。
翌年も台風が来て水害が…
そうしたら翌年、また台風が来て同じような水害が起こったのです。病院は再び浸水しましたが医療機器は無事でしたし、前年ほどの被害はありませんでした。
そうは言っても2年連続の被災は心に応えます。
「自分だけどうしてこんなに運が悪いんだろう」「また来年も災害が起こったらどうしよう」と再び気持ちが荒(すさ)みました。
そんなときです。私の患者さんたちが「先生、大変だったね」「私たちも手伝うよ」と言って、ボランティアで掃除に来てくれたのです。なかには高齢の方や持病のある方、身体の状態が心配な方もいたのですが、「いや、先生にはお世話になっているから」と言って、私のために何かしようとしてくれたのです。
その気持ちがありがたく、私は言葉にならない感動に包まれ、涙を堪(こら)えきれませんでした。
確かに悪いことは起こったけれども、私にはこうして自分を助けてくれる人たちがいる。私は幸せ者だなと感じました。そのときに心の奥から「ありがたい」という気持ちが湧いてきて心が震えました。


















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