累計8億本!キリンビールの糖質ゼロがバカ売れのワケ 発売から5年も成長維持。健康志向の高まり見据えた次なる戦略とは
「糖質を削ると、どうしてもコクがなくなります。いかにビールらしい飲みごたえを残すかが最大の課題でした。通常、ビールの醸造にかかるのはおよそ1か月ほどですが、糖質ゼロを実現するまでには350回以上の試験醸造を繰り返し約5年かかりました」(キリンビール生産本部名古屋工場醸造エネルギー担当 部長 森下あい子さん)
ブレイクスルーとなったのが、2020年発売時に確立された「新・糖質カット製法」だ。 「麦芽の選定」「仕込技術の進化」「発酵技術の進化」という3つのポイントを組み合わせることで、ビール本来の味わいを損なうことなく糖質を限界まで減らした。
「原材料として使用する麦芽を一から見直し、糖質低減に適した麦芽を厳選しました。また、当社がこれまで培ってきた糖質分解の技術をさらに磨き、酵素がより効率的にでんぷんを分解できる仕込技術を確立。さらに、通常のビールよりも厳しい管理のもとで活性の高い酵母を使用することで、糖質の“食べ残し”を低減し、糖質ゼロを実現できました」
発売から1カ月で100万ケースを突破
手法に制限があったからこそ、“ビールのまま糖質ゼロを実現する”ことに強くこだわったという。こうして誕生した「一番搾り 糖質ゼロ」は、発売直後から「ゼロとは思えない」「普通のビールより飲みやすい」と話題になり、健康志向層だけでなく幅広い層に受け入れられた。
発売から1カ月で100万ケースを突破し、年間販売目標約120万ケースの8割超を達成。初月の販売実績は当初計画比約120%にのぼり、過去10年間で発売された同社ビールカテゴリー新商品の中でも最高の滑り出しとなった。
そして、2025年のリニューアルでは、麦汁の一部を2回煮沸させる「ダブルデコクション製法」を新たに採用。煮沸を繰り返すことで麦のコク味成分をしっかり引き出し、より厚みのある味わいを実現した。糖質ゼロだからこそ、素材の旨みを丁寧に引き出す必要があったと、開発担当者は語る。
「また、華やかなホップの品種を新たに採用することで、ビールらしい香りを強化しました。糖質オフ・ゼロ系を“健康のために仕方なく飲む”ものではなく、“飲みたいから選ばれるカテゴリー”として成長させたい、そんな想いのもと、リニューアルでは味の進化を目指しました」(同社マーケティング部商品開発研究所 緑川果琳さん)



















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