無報酬で家業の"老舗和菓子屋"に入った3代目女性、「伝統を壊すな」と職人からの猛反発を受けても、経営改革に乗り出した"覚悟"

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このヒット商品を生み出したのは、1964年創業の老舗、村井製菓3代目の村井沙邦莉(さほり)さんだ。彼女はほかにも、どら焼きにバターや生クリーム、フルーツを加えた「生どら」、宝石のように美しい琥珀糖など、従来の和菓子のイメージを覆す商品を次々と打ち出してきた。創業時の味と想いを大切にしつつ、現代の「カワイイ」感性を加えたこれらのスイーツは、若い世代の関心を惹きつけ、売り上げにつながっている。

生どら
2016年から販売スタートした「生どら」。あんこだけでなく生クリームやクリームチーズ、季節のフルーツソースなど、多彩なフレーバーが楽しめる。スマイルの焼印がキュート(筆者撮影)
琥珀糖
乙女心をくすぐる宝石のようなカラフルな琥珀糖は、2022年から販売をはじめた(筆者撮影)

順調に見える村井製菓だが、和菓子人気が低迷し、一時は経営危機に陥っていたという。沙邦莉さんは家業を立て直すために勤務先を退職し、自身が一人前だと納得するまで給料ゼロで働いた。

「働きたいんやったら好きにしたら?」

「お前はほんまにばちこいのお」

伝統を重んじる男性中心の職人の世界。代表かつ和菓子職人である父・克行さんやベテラン職人との衝突は絶えなかった。沙邦莉さんが新しい風を入れようとするたび、価値観の相違から辛辣な言葉を投げかけられた。だが、厳しい態度をとられ続けてもなお折れることなく、その怒りをエネルギーに変えてきた。

沙邦莉さんは男性社会の和菓子の世界にどう切り込み、新しい和菓子をどのようにして打ち出したのだろうか。

「いま、会社がしんどいねん」。母のSOSに一念発起

村井製菓は祖父の清さんが1964年に創業した。沙邦莉さんは3姉妹の次女として育ち、子どもの頃は内向的で友人は少なく、家で過ごすことが多かったという。

村井製菓
1964年創業当時の村井製菓。祖父・清さんが10代のときに仲間と一緒に立ち上げた会社だ(村井製菓提供)
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