無報酬で家業の"老舗和菓子屋"に入った3代目女性、「伝統を壊すな」と職人からの猛反発を受けても、経営改革に乗り出した"覚悟"
このヒット商品を生み出したのは、1964年創業の老舗、村井製菓3代目の村井沙邦莉(さほり)さんだ。彼女はほかにも、どら焼きにバターや生クリーム、フルーツを加えた「生どら」、宝石のように美しい琥珀糖など、従来の和菓子のイメージを覆す商品を次々と打ち出してきた。創業時の味と想いを大切にしつつ、現代の「カワイイ」感性を加えたこれらのスイーツは、若い世代の関心を惹きつけ、売り上げにつながっている。


順調に見える村井製菓だが、和菓子人気が低迷し、一時は経営危機に陥っていたという。沙邦莉さんは家業を立て直すために勤務先を退職し、自身が一人前だと納得するまで給料ゼロで働いた。
「働きたいんやったら好きにしたら?」
「お前はほんまにばちこいのお」
伝統を重んじる男性中心の職人の世界。代表かつ和菓子職人である父・克行さんやベテラン職人との衝突は絶えなかった。沙邦莉さんが新しい風を入れようとするたび、価値観の相違から辛辣な言葉を投げかけられた。だが、厳しい態度をとられ続けてもなお折れることなく、その怒りをエネルギーに変えてきた。
沙邦莉さんは男性社会の和菓子の世界にどう切り込み、新しい和菓子をどのようにして打ち出したのだろうか。
「いま、会社がしんどいねん」。母のSOSに一念発起
村井製菓は祖父の清さんが1964年に創業した。沙邦莉さんは3姉妹の次女として育ち、子どもの頃は内向的で友人は少なく、家で過ごすことが多かったという。

無料会員登録はこちら
ログインはこちら