いよいよ最終日を迎える大阪万博。完全予約制の高いハードルが出足を鈍らせるも会期中に改善、パビリオン側も独自の工夫を重ねた結果

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それよりかは美しいアート作品や写真映えする展示などのほうが圧倒的に印象に残る。あとからそこに込められたメッセージがじわじわと感じられるようであればなおいいが、フランス館などはまさにそうしたことを狙った展示になっていた。

来場者に一番伝えたかったフランスの文化や日本との深い結びつきなど1つ1つの展示作品をアート作品として作り込んでおり、そこに込められたメッセージは心で感じてもらうか、どうしても情報として知りたい場合は、QRコードで背景情報を提供するという方式を取っていた。

来場者の回遊を足止めする要因になりやすい映像や動くインスタレーションなどの展示もあったが、いずれの展示も3分以内で完結するというフォーマットを作ったことで、人の流れがスムーズになっていた。フランス館の前には常に長蛇の行列ができていたが、それでも他のパビリオンと比べると圧倒的に回転がよく、それでいて多くの人が高い満足度を示していた。

体験設計のプロを巻き込むことが重要

これはフランス館に、そうした体験設計のグランドデザインができる優秀なデザイナーがいたからにほかならない。

万博全体の設計にしても、来場の体験、パビリオンの体験などをよくするうえでは、ただ「何をやるか」を決めるだけではなく、「どのように形にするか」の部分を考えられる体験設計のプロフェッショナルを巻き込むことが必須ではないかと思った。

大阪・関西万博
フランス館は大阪ヘルスケアパビリオンと比べると小さいながら20日遅れで9月26日に来場者400万人を達成。アラブ首長国連合(UAE)も同日に400万人達成を祝った(筆者撮影)
大阪・関西万博
例えば同じ2019年に火災にあったパリのノートルダム寺院と沖縄の首里城。それぞれの火災現場から持ってきた顔の破片を展示して、その上に表示されるアニメーションでフランス、日本両国の絆を示すアニメーションを表示。フランス館の展示は説明ではなく来館者に何かを感じてもらうことを目指したアート的な展示になっており多くの人々に強い印象を残していた(筆者撮影)

当初から万博は終盤が近づくほど来場者が増えるとは言われていたが、深刻な来場者不足が囁かれていた状態から、ここまで多くの人が殺到する状態になるまでの変化は予想が難しかったと思う。その中で、果たして本当にもっとうまい計画の立てようがあったのかを判断するのは難しい。

ただ、Web予約システムの使い勝手がともかく悪く、ITリテラシーが低い人への配慮が足りず難しさばかりが目立った点についてはもっとうまくできたのではないか。

今回の万博を失敗にしないためには、この経験を2027年の国際園芸博覧会(GREEN x EXPO 2027)などにいかにうまく活かしていくかで判断されることになると思う。

林 信行 フリージャーナリスト、コンサルタント

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はやし のぶゆき / Nobuyuki Hayashi

1967年、東京都出身。フリーのジャーナリスト、コンサルタント。仕事の「感」と「勘」を磨くカタヤブル学校の副校長。ビジネスブレークスルー大学講師。ジェームズダイソン財団理事。グッドデザイン賞審査員。「iPhoneショック」など著書多数。日経産業新聞「スマートタイム」、ベネッセ総合教育研究所「SHIFT」など連載も多数。1990年頃からデジタルテクノロジーの最前線を取材し解説。技術ではなく生活者主導の未来のあり方について講演や企業でコンサルティングも行なっている。

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