いよいよ最終日を迎える大阪万博。完全予約制の高いハードルが出足を鈍らせるも会期中に改善、パビリオン側も独自の工夫を重ねた結果

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特に競争の激しいパビリオンの予約に関しては、ITに詳しい人々が予約を有利にするための方法を次から次へと生み出していった。

例えば複数のスマートフォンで予約サイトにログインし手動で連打して予約を取ろうとしたり、URLの一部を書き換えて待機列をスキップして予約サイトにアクセスしようとしたり、予約ページを自動でリロードし予約可能になったら自動で押下するプログラムを使ったりと、ITスキルのある人たちはとにかくさまざまな方法を駆使してパビリオンの予約を行った。

それらの行為の一部は不正行為とみなされ対策が施されたがイタチごっこだった。ここに遅い時間の入場予約しか取れなかった人が、キャンセル待ちで早い入場への変更を狙うといったアクセスも重なり、予約システムは何度もダウンするシステム障害が頻発した。

デジタル技術を活用して来場者の流れを制御するはずが、逆に来場者に振り回されてそうした行為に関係ない人たちまで予約や来場のトラブルを招く事態も引き起こしていた。

今後、同様の大規模イベント向けのシステムを設計する際には、こうした利用者側によるハック行為も想定したシステム設計は避けられないが、それはただ技術力があれば作れるというものではなく、そもそも予約方法をどうするかや料金体系をどうするかなどのイベント運用のデザインとも密接にかかわってくる。

事前に利用者の視点で、どのような体験の道筋を通り、どこでどんなペイン(痛み)を感じるかといったことを大規模シミュレーションし、できるだけわかりやすいシンプルな形で整えることができる優秀なサービスデザインのデザイナーがかかわっていることが重要なのではないかと感じた。

より多くの人が満足できるようにパビリオン側も奮闘

ただすでに述べたように今回の万博は、「現場力」が大きなものをいった。多くの来場者が満足できるパビリオンの予約方法については、パビリオンの側でも試行錯誤が続いた。

イタリア館やウズベキスタン館などのように独自のスマートフォンアプリを作り、アプリ利用者向けの独自の優先レーンの予約を始めるパビリオンもあった(ちなみにイタリア館はすぐに全日程の予約が埋まった。またウズベキスタン館は個人情報漏洩問題が起こり、利用を中止した)。

だが、夏以降、多くのパビリオンに予約枠開放の流れが広まっていく。万博会場に行く前から、どのパビリオンに行くかを綿密に決断できる人はそんなに多くはない。

会場を歩き回りながら発見した面白そうなパビリオンに入ってみたいと感じ、入場できることこそが万博におけるセレンディピティ(予期せぬ出会い)の楽しさだが、すべてを予約で運用しようとすると、この楽しさがまったくなくなってしまう。

そんな声の広がりもあり、当初は完全予約制としていたパビリオンの中にも、夏以降、独自に行列を作って並んで入場できる時間帯を設けるところが出始めた。

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