いよいよ最終日を迎える大阪万博。完全予約制の高いハードルが出足を鈍らせるも会期中に改善、パビリオン側も独自の工夫を重ねた結果

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単純に待機列を作ると早い時間に入場できた人だけが有利になってしまい、入場列も際限なく長くなってしまうこともあり、1日に何度か、決まった時間に待機入場を新たに受け付ける時間帯を設けることで平等な入場機会を作ろうとするところが増えたのだ。

この入場方式は、そうした入場方法を早くから実践していたガンダム館にちなんで「ガンダム館方式」などと呼ばれ、最終的には10館以上が同様の方式を取るようになった。

インスタレーションモードを設定した「null²」

これ以外にも独自に、少しでも多くの来場者が楽しめるための工夫をしていたパビリオンがあるが、その筆頭は落合陽一プロデュースシグネチャーパビリオンの「null²」だろう。

パビリオンが本来目指している体験は落合氏が、プロデューサーに選ばれたときから、2025年時点でのAIの能力を想定し、そこから逆算して作ったというAI時代の人類のあり方について考えさせる最先端のデジタル体験(ダイアログモード)だが、この特別な体験は1回約20分あたり30人前後しか体験できない。

そこで落合館では、そもそもパビリオンに入れない人にも楽しんでもらおうと、全面が鏡面仕上げで、しかも、その鏡面が変形し続けるという会場でも一番見応えのあるモニュメント型パビリオンを作る。

また、一人でも多くの人にパビリオンの内部を見てもらおうと、体験を省いて時間を節約、より多くの人が中を見れるようにした「インスタレーションモード」という入場枠を設定。

それでも入館したいという声に十分応えられなかったため、8月後半には立ち止まらず歩いて通り過ぎながら内部の様子を見る「ウォークスルーモード」(体験時間は1分未満)を追加。

ガンダム館方式に近い枠開放をしばしばやっては落合氏本人がパビリオンの前に立ってじゃんけんで入場者を決めてみたり、ソーシャルメディアで見つけた熱い思いを抱いている人を落合氏が個人的に招待したりと、とにかくできるだけ多くの人にチャンスが巡ってくるようにさまざまな工夫を重ねていた。

こうしたパビリオン単位で行われている工夫の多くは、主にパビリオン関連のソーシャルメディアアカウントなどで発信され、より多くの人が利用する万博公式アプリなどが、そうした情報伝播の役割を果たすことはほとんどなかった。

大阪・関西万博
落合陽一シグネチャーパビリオン「null²」インスタレーションモードの様子。通常は体験「ダイアログモード」では、中央の縦型ディスプレイを囲むように30人ほどが立っており30分かかるが、より多くの人に中の様子を見せることが目的のこの「インスタレーションモード」では、体験用の空間をガラス窓の外から眺める設計で体験時間も10分と短い。とにかく多くの人に中を見せることが目的だ。これを開幕前から考えていたことに落合氏のサービスデザインの能力がうかがえる。なお、その後、中を歩いて通り過ぎる体験時間45秒のウォークスルーモードも追加。1人でも多くの人にパビリオン内を体験してもらいたいという熱意が伝わってくる(筆者撮影)
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