韓国を悩ます「TPP出遅れ参加」の損得勘定 拡大する日本の影響力を危惧
TPPは、韓国の産業界にとって必ずしも良いものではない。参加した場合、TPP参加国への輸出拡大、そして輸入コスト削減という二つの効果が期待できるが、実質的には日本との市場開放に合意するという側面を持ち、これによる負担は小さいものではない。韓国の産業のうち、日本に対して優位性を持っているのは電機・電子、鉄鋼程度。もしTPPに参加しないとしても、一部で懸念されているほどには韓国経済に大きな悪影響を与えるものではない。
2014年に産業通商資源省が発表した「TPP深層レポート」によれば、TPPに参加すると発効後10年でGDPが1.7~1.8%程度上乗せされる。一方で参加しない場合は、0.12%程度の減少が見込まれる。この数字は、経済規模からすれば非常に微々たるものだ。
それでも韓国がTPPに参加する理由は、関税以外の要素があるためだ。メガFTAとは、単なる関税撤廃を行うというものではない。TPPは、労働、環境、海外投資家保護、知的財産権、公正取引などの問題を包括する、広範囲で高いレベルの国際的合意だ。WTO(世界貿易機関)などこれまでの協定を超え、新たな貿易秩序がつくられる場でもある。
だからこそ、グローバルスタンダードの形成過程に、韓国が主導的に参加すべきなのだという指摘が高まっている。また、TPPは単なる経済同盟ではなく、外交安保面でも同盟を形成するという点も考慮すべきだろう。
世界ルールへの乗り遅れに強い危惧
韓国政府は、正式発効前になんとか参加国として名乗りを上げる戦略のようだ。しかし、「高い参加費」が最大の問題となりそうだ。TPPをリードする日米は、韓国が参加し、議論を交わすことを歓迎する立場だが、実際に交渉が始まれば日米に有利な条件を打ち出してくることは明白だ。すでに合意した枠組みがあり、そこに韓国が入り込もうとしても声さえ上げられない可能性もある。
また、交渉をリードした日本でさえも、最後まで守ろうとした農業分野で妥協を強いられた。韓国もどこかで妥協しなければならず、それが農業分野になる可能性が高い。崔副首相は「コメは死守する」と明言したが、その通りになるかは未知数だ。国民の情緒に合わない条件があれば、TPPに参加しても国会で批准されるまでに、難航は避けられない。どう動こうことも、韓国政府には苦痛が待ち構えている。
(韓国『中央日報エコノミスト』2015年10月19日号)
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