韓国を悩ます「TPP出遅れ参加」の損得勘定 拡大する日本の影響力を危惧

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とはいえ、TPP交渉妥結は韓国にとってあまり気分がよいニュースではない。経済界では「日本にしてやられた」との指摘もある。韓国はこの10年間、国際世界でFTA締結に血眼になっていた。FTA大国さえ自称していた。一方で、日本は日本国内からも「動きが遅すぎる」と言われるほど、FTAへの動きは鈍かった。それなのに、今回のTPP交渉妥結で、韓国が締結した11カ国のFTAと同じ数の自由貿易相手国を得ることになった。

韓国政府は「TPP交渉が妥結し発効すれば、日本のFTA市場規模は日本の貿易額全体の42.7%になる。だが、まだ韓国には及ばない」と説明したが、「韓国は大きな流れを読み取れず、二国間のFTAに邁進し、逆に競争に落伍した」との批判が出ているのも事実だ。『中央日報エコノミスト』は2014年3月、「二国間FTAのみに邁進せず、メガFTAにも打って出るべき」と提案していた。

通商政策の転換を迫られる韓国

もちろん、TPPが正式に発効するには、各国国会の批准手続きが必要だ。これには少なくとも1~2年かかりそうだ。そのため、すぐには韓国の輸出に影響を与えるわけではない。だが、発効すれば日本の影響力が拡大することは明らかだ。円安という悪条件にあえぎながら日本企業と血を見る競争をしている韓国企業にとって、政府の対応には不満が出始めている。

TPP交渉妥結で、世界貿易が大きな転換点を迎えた。韓国・対外経済政策研究院(KIEP)の分析によれば、韓国は世界主要国の中で国家経済への貿易依存度が最も高い。2013年基準では、82.4%に達している。これは日本の31.6%、米国の23.3%と比べると著しく高い数字だ。当然、新たな貿易秩序や規範、変化には敏感にならざるを得ない。

だからこそ、韓国もTPPへ参加すべきかどうかを決定する時期に来た。韓国はこれまで、TPPよりは東アジア地域包括的経済連携(RCEP)のほうに熱心だった。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国、日本、韓国など16カ国が参加するRCEPは、GDP規模ではTPPより小さいが、貿易規模は大きい。参加国の人口を合わせると、世界人口の半分になる34億になる。

通商上の最大のライバルとなる日本がTPPとRCEP両方に参加していることを考えれば、「今すぐにでもTPPに参加すべき」という主張が受け入れられやすい。韓国政府も、事実上の参加表明を行った。崔炅煥(チェ・ギョンファン)副首相兼企画財政相は、「どのような形であれ、メガFTAに参加する方向で検討する。公聴会など通常の手続きを経てTPPに参加するか、参加するならどのタイミングでするかを決めることになるだろう」と述べている。

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