日本の鉄鋼業は中国の乱造にこう立ち向かう 新日鉄住金社長が語る"覇権"維持の戦略

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――日本の粗鋼生産量は1970年代にピークを迎え、合理化や再編を繰り返してきた。そのノウハウを中国に提供する考えはないのか。

その可能性は十分にある。日本の場合、新日本製鉄ができて、リーダーが率先して生産量を減らすというやり方で成功した。本当に苦労したのは、生産能力を落としながら、どうやって雇用を維持するかということ。新規事業に参入したり、出向制度で別の仕事を探したり、いろんなことをやってきた。

中国のトップに会うときは、「ノウハウはあるから相談に乗れますよ」という話をずっとしている。国営の大手はそういった問題がわかっているが、地方や民営の会社はどうしても雇用を維持したいと思っているようだ。

最後の拠り所は「コスト競争力」

──市況悪化への対応策は?

中国の過剰生産が何年続くのかはわからない。最後の拠り所はコスト競争力になっていく。そのために3年間で1兆3500億円の設備投資を行う。中心となるのは、(石炭の加工設備である)コークス炉や発電設備など老朽化した基盤の整備だ。採用も例年の700人から1300人に増やし、若い世代を育てていく。

──ポスコとの関係はどうなるのか。

同社とは15年前の2000年から戦略的提携を続けてきた。不幸なことに電磁鋼板の訴訟が起きたが、訴訟は理屈の世界だ。会社と会社の関係では、技術交流やコンサートの共催もやっているし、友好関係を維持している。

進藤孝生(しんどう こうせい)/1949年秋田県生まれ。1973年に旧新日本製鉄入社。2005年に経営企画担当の取締役就任。2012年の新日鉄住金発足に伴い、副社長に就任。2014年から現職(撮影:大澤誠)

──鉄鋼業は成熟産業だ。今後の経営の舵取りをどう考えるのか。

英国でも米国でも、鉄鋼業はインフラと一緒に成長していった。インフラが整えば、(国内需要がピークアウトして)鉄鋼業の“覇権”は40年ぐらいで別の国へ移っていく。

日本はどうか。当社は今、コークス炉の改修を進めているが、これらの設備はほとんどが稼働から40年以上が経っている。

鉄鋼業をやめるつもりはさらさらない。もう一度、老朽化した設備を刷新して、日本の覇権を維持していく。そういう意味では世界初の挑戦だ。

「週刊東洋経済」2015年10月31日号〈10月26日発売〉「この人に聞く」に加筆)

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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