日本の鉄鋼業は中国の乱造にこう立ち向かう 新日鉄住金社長が語る"覇権"維持の戦略

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現時点で、時価総額や技術力は世界一、しかも競合に大きく差をつけている。コスト競争力も、経営統合の効果によって、為替が1ドル=120円前後であれば、ポスコとそれなりに戦える水準になっている。あとは専門部署を立ち上げ、海外で事業を拡大するためのノウハウを蓄積している最中だ。

──足元の経営環境をどう考えているのか。

国内はアベノミクスや東京五輪、国土強靭化など(さまざまな需要拡大)の要素があり、経済の地合いは堅調だ。ただ、海外は不確実さが増している。中国の鋼材生産量は以前とほぼ同水準でありながら、鋼材の消費量が減っている。

生産量と消費量の差である需給ギャップは年間1億トン程度。ほとんどが輸出となり、アジアの市況を悪化させている。

中国の過剰生産は雇用の問題でもある

君津の製鉄所は2基ある高炉を1基に集約する

――今年4月から新しい中期経営計画を策定した。

大きな戦略として、鋼材を生産する上工程と、自動車や石油業界向けに加工する下工程を、それぞれ国内と海外という、4つの区分に分けて考えている。

国内の鋼材生産で使う石炭や鉄鉱石は、どこの国の鉄鋼メーカーでも豪州とブラジルからドル建てで買っている。しかも(多額の設備投資が必要で、大量生産しないと利益が上がらない)資本集約型の産業なので、日本でも中国でも競争環境は同じだ。

差別化の要素である顧客向けの加工工程では、競争力を維持するため、国内の合計14ラインを止めて生産設備を集約し、1トン当たりの生産コストを下げている。

海外の加工拠点は、基本的に現地のパートナーから母材を調達し、現地で加工してから顧客に納めるので、競合メーカーと同じ条件で競争できる。中国の過剰供給で市況が低迷しているので、自社で高炉(母材の生産設備)を新設するということは当分ない。

――中国の過剰生産リスクをどのようにとらえているのか。

本質的には中国の過剰生産応力が整理されて、彼らの販売方針が変化しないと変わらない。カツカツの利益しか上がらなくても、補助金や政府の援助があるので、会社が存続してしまう。

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