しかし、いまは腎臓病治療の常識が大きく変わり、慢性腎臓病の人でも「ちょっとした食事の工夫」をすることによって、普通の人とほとんど変わりのない食生活を送れるようになってきているのです。
通常、慢性腎臓病で腎機能が低下してきた人は、「塩分」「糖質」「たんぱく質」などを制限するよう注意を受けるものですが、私が考案した「腎臓リハビリ」では、これらを厳しく制限することもなく、なおかつ日々ストレスなく明るい食生活を送れるように、さまざまな工夫を凝らしています。
では、腎臓病の食事の常識がどのように変わったのか。食事でどんな点を工夫すればいいのか。新旧の常識を見比べながら、ひとつずつ紹介していくことにしましょう。
変わってきた「腎臓」のための食事の常識
古い常識……腎臓病の人は厳しい食事制限をガマンするのが当たり前
腎機能が低下してくると医師や栄養士からさまざまな食事面の制限を課せられるわけですが、なかにはこうした食事制限をまじめにやりすぎて、食を細らせてしまったり、体重を落としてしまったりする人も少なくありません。
でも、じつはそれがいちばん危険なのです。とくに70代以上の高齢者の場合、食事量の低下は病気や衰えを進ませる第一歩。食事量が減ってたんぱく質などの栄養が不足すると人の体は自らの筋肉を分解して不足分を補おうとするため、筋肉量がてきめんに減ってしまうのです。なかには、短期間のうちにサルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)を進ませてしまう人もいます。
しかも、栄養不足によって「筋肉→たんぱく質」の分解が進むと、結局たんぱく質をたくさん摂取したのと同じ状況となり、腎機能をいっそう弱らせてしまう事態につながることが多いのです。ですから、全体の食事量を減らしてしまうのは絶対にNG。1日3食「ちゃんと食べる」ことを徹底するべきです。
それに、食事制限というものは、あれこれガマンして細かく守って行なおうとするよりも、食べ方を工夫したうえで少々アバウトなくらいの姿勢で臨むほうがいいのです。目を吊り上げてがんばるよりも、肩の力を抜いて必要なポイントだけを守って少しいい加減に行うくらいのほうが結果につながりやすいんですね。
また、そういうおおらかな姿勢でやっていれば、「これも食べられる、あれも食べて大丈夫」といったポジティブな思考で食生活を送れるようになるはず。「腎臓病は『食べて治す』」という前向きなマインドセットが大切なのです。ぜひみなさん、その点を心得たうえで、毎日の食事にリラックスした姿勢で臨むようにしてみてください。
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