「私の場合は18歳までに勉強というものをほぼしてきませんでした。でも、勉強を始めてから、数学とか理科とか化学などを今までやっていなかったので、とても新鮮に思えたんです。今思うと、受験をしているときはすごくつらくてよく落ち込んでいました。試験が不合格になった後は、毎年2カ月くらい落ち込んでしまって勉強をなかなか始められなかったものですが、今思うと、勉強をやっている時はよく頑張っていたなと思いますね。それも、周囲のみんなが18歳のときに一生懸命詰め込んでいたことを、大人になってから楽しんで学べていたことが大きかったのかもしれません」
子どもも産みたかったし、医師にもなりたかった
現在は大学病院に勤め、総合診療内科で様々な病気を診ている新開さんに、浪人して変わったことを聞くと、「長時間集中できることになった」、「今まで諦めてきたことも諦めなくなった」と答えてくれました。
「私は子どもも産みたかったし、なおかつ人の役に立つ医師になりたかったので、出産・子育てと受験を同時並行で両方やっていました。7浪目には、2児の母親になっていましたし、『年齢もある程度いっているのにこんなに形にならない人生は良くない』と思って、最後の年にしようか悩んだこともありました。すごく大変でしたが、途中で諦めなくて本当に良かったと思います。最初から『医師を諦める』という選択肢が自分の中になかったから、続けることができたのだと思います。
思えば、私は年を取ってから医師になりました。予備校や医学部で教えてくださった先生方からすると、若い先生の方が伸び代も鍛えがいもあると思うのですが、こんな私でも医師になってよかったなと思います。口腔がんや失明など、私自身が経験したことない患者さんの痛みや悲しみも共感できるようになりましたし、普通の医師はガイドラインに載ってない、データにないことは治療を諦めるのですが、私はそのような中でも、粘り強く、なんとかしたいと思い、諦めない気持ちを持っています。
だから、自身の浪人時代に諦めなかった気持ちが、今、すごく診療に役に立っていると思います。今までの自分の喜びや悲しみが、全部患者さんの診療に役立っています。医師という仕事は、年を取ってからなってもよかったなと思える仕事でした」
彼女が今までの人生や浪人で経験した苦しみはすべて、現在の医師としての仕事への姿勢に役立っているのだと感じることができました。

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら