南シナ海では中国の存在感が高まっている アメリカ軍を「量」で凌駕

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中国の艦船は距離を保ちながらラッセンを追跡したとはいえ、自国が領有を主張し、造成した7つの人工島から12カイリ内を米国が繰り返し航行すれば、同国の忍耐を試すことになると、専門家らはみている。

中国の張業遂・筆頭外務次官は、米国のボーカス駐中国大使を呼び出し、米艦派遣は「極めて無責任」だと抗議した。一方、米当局者らは、国際法が許す限り、米国はどこでも飛行や航行を行うと繰り返し述べている。

緊張が高まる中、両国の海軍は29日にテレビ会議を開催。米政府高官は、双方が対話の継続と「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(CUES)」を順守する必要性で一致したと明らかにした。

中国は人工島にすでに1本の滑走路を完成し、さらに2本を建設中。人工島は中国にとって、東南アジアやそれを超えた海域への海洋進出の足掛かりとなるだろう。スプラトリー諸島では、ベトナム、フィリピン、台湾、マレーシアも実効支配している。

地元の利

米国防総省が4月に発表した調査によると、南シナ海に配備されている中国の艦隊は、同国が保有する3艦隊のうち最大となる116隻で構成されている。

同調査はまた、中国が500トン型以上の巡視船200隻以上を保有しており、その多くが1000トン型以上だとしている。同国の巡視船隊だけで、他のアジア諸国の合計数をしのぐという。

一方、日本の横須賀を拠点とし、原子力空母ロナルド・レーガンが所属する米海軍の第7艦隊は55隻で構成され、西太平洋とインド洋の大半を管轄下に置く。

「中国には地元の利がある」と、オーストラリアの元海軍将校で、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のアドバイザーを務めるサム・ベイトマン氏は指摘。侵入者とみなされる相手と対峙する場合など「いくつかの状況では、質よりも量が重要となり得る」と語った。

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