朝ドラ【ばけばけ】商売の基本を理解していなかった武士たちの苦難 明治初期に空前の「ウサギブーム」はなぜ起きたのか

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「塚原さん、商売は金を貸すのに限りますよ。お金貸しはいいものですよ。割のいい利を取って、手堅い証文を入れさせたうえに、このように毎日いろんな品物をもらいます。これを始めてから菓子に酒に鶏卵に鰹節に魚というものを買ったことはございませんよ。ほんといい商売!」

この武士の妻は、金を借りたい人から、砂糖、酒、菓子などいろんなものを受け取る日々で、うれしい悲鳴を上げていた。だが、肝心の貸した金がなかなか回収できなかった。ただ金を貸し付ければ、自動的に金利が支払われてくると勘違いしていたらしい。当然、商売は立ち行かなくなったようだ。

旧幕臣たちは、江戸城の外堀沿いにあたる四谷大横町、赤坂溜池、市ヶ谷、神楽坂下などに出店することが多かったが、赤字で閉店するケースが多かった。

その後、明治政府は財政難を理由に、士族の土地・俸禄を取り上げて、商売へと転身を図らせた。

だが、やはりそれもうまくいかず、士族への大きな不満へとつながった。もし、幕臣たちの失敗を教訓としていれば、士族への支援の仕方もまた違ったのかもしれない。

謎すぎる空前絶後の「ウサギブーム」

「ばけばけ」の第2回放送では、幼き主人公の松野トキが父から「ピョーン!」と、ウサギを見せられるシーンがあった。実際に明治初期に吹き荒れた「ウサギブーム」である。

そもそもの発端は、明治4年に「皇室では1日2回牛乳を飲む」と新聞で報道され、牛乳の存在が一気に知られるようになったこと。文明開化の真っただ中で、すべて欧米に見習おうとしていた頃だけに、牛乳が大ブームとなった。

そんな急速に高まった牛乳のニーズに飛びついたのが、食いぶちを探していた士族たちである。こぞって牧場経営に参入し、江戸の各所にあった武家地が、牧場へと早変わりした。

だが、広大な土地を持つ士族ばかりではない。何か牛に代わって飼うものはないか、ということで、士族はこぞってウサギの飼育をし始めたのである。

なかには屋敷や家財道具を売ってまで、ウサギの飼育に乗り出した者までいたという。ウサギを飼育したところで、皮や肉のニーズもしれているというのに、誠にブームというものは恐ろしい。

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