武田に戻ってきた追徴課税500億円、海外進出増加で移転価格課税リスクが急拡大
かつては異議申し立て段階では言うに及ばず、不服審判においても現場の課税判断が覆ることは例外的だったが、最近は納税者の主張を認めるケースが増加傾向にある。「事例が増え、国側も客観的に調整できる体制が整ったことで、異議申し立てのプロセスが機能するようになっている」(ヒールシャー・魁氏)からだ。
だが、今回のような巨額の還付が認められるケースはやはりまれだ。当然、日米間の交渉で積み上がった議論も影響を及ぼしていると見ていい。
今回認められなかった、残る246億円(納付済み税額ベースで116億円)について、今後も争い続けるのかどうかについて、武田は「異議決定通知書の内容を精査したうえで、今後の対応を検討していく」としている。
偶然か否かは不明ながら、今回返還を受ける金額は図らずも納付額と同額。ヒールシャー・魁氏は「当初の状態では企業として争うしかない状況だったが、これで巨額のダメージは解消され、残り2割を争うかどうかを判断できる範囲になった。とはいえ、この6年間でコンサル料も含めて多額の外部コストも使っており、ダメージが完全に回復できたわけではない。残り2割を争うかどうかについては、武田が日本を代表する企業として正しい行動を追求し、各ステークホルダーに説明ができる合理的な決断をしていくだろう」と見る。
課税件数は増加傾向、無防備すぎる中小企業
国税の事務年度は7月に始まり翌年6月に終了する。武田が追徴課税を受けた06年6月は、平成17事務年度末に当たる。この平成17事務年度は、武田以外にソニーも多額の更正処分を受けており、課税所得金額はこの2社だけで1967億円にも上った。同事務年度合計2836億円からこの2社分を差し引くと869億円だった。