武田に戻ってきた追徴課税500億円、海外進出増加で移転価格課税リスクが急拡大

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国税が認めたのは価格算定手法のみ

移転価格課税は、利益配分を親会社がコントロールできる子会社との取引が対象になる。武田のケースでは、アボット社と50%ずつの出資で設立したTAP社との取引で追徴課税を受けた。後にTAP社は武田の100%子会社になる(08年)のだが、課税対象になった取引が行われた当時は完全なフィフティ-フィフティの状態だった。

武田とTAP社との間の取引は、事実上アボット社との取引であって、取引条件を武田が一方的にコントロールできる立場にはなく、武田がTAP社に所得を分け与えるインセンティブもなかった。そこで武田は「そもそも課税対象となったTAP社との取引は移転価格税の対象ではない。よしんば対象であるとしても、その取引価格は妥当である」という主張を展開した。

今回異議申し立てが受け入れられたポイントについて、武田は「独立企業間価格の算定において、当社の主張する算定手法が一部認められた」としている。

移転価格税制においては、租税特別措置法に、利益配分の妥当性を検証するための6通りもの算定方法が定められており、納税者はここで規定されている計算式に基づいて計算をし、その妥当性を主張する。

「今回、大阪国税局は、TAP社との取引が移転価格課税の対象ではないという主張は認めていない。これを認めた瞬間に全額返還以外の結果はありえなかったわけで、6種類ある算定方法のうち、どの方法をどのように適用するかの議論だったはず」(新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人移転価格部リーダーのヒールシャー・魁氏)だという。

注目される残り2割への対応

移転価格における先進国同士の相互協議の歴史はすでに20年以上の歴史を持ち、互いが歩み寄って、企業の二重課税状態の解消を図ろうとする良好な関係が出来上がっている。特に日米間はお手本のような関係とされていただけに、昨年11月、武田のケースで日米間の交渉が決裂したことは驚きをもって受け止められた。

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