武田に戻ってきた追徴課税500億円、海外進出増加で移転価格課税リスクが急拡大
武田薬品工業は4月6日、移転価格税制に基づいて、大阪国税局から追徴課税された納付済みの税金571億円が還付される見込みであることを明らかにした。
武田が、米国アボット社との合弁会社・TAP社との間の消化性潰瘍治療剤「プレパシド」の製品供給取引で、1223億円に上る所得金額の更正処分を受けたのは今から約6年前の2006年6月。追徴税額は571億円にも上った。
武田は全額納付をしたうえで、06年8月、大阪国税局に対し異議申立書を提出。紆余曲折を経て、今回、大阪国税局は1223億円のうちの8割弱に当たる977億円の更正処分を取り消した。このため、納めた571億円のうちの8割弱に当たる455億円に、還付加算金116億円が加わり、偶然にも納めた571億円と同額が返還されることになった。
課税処分に対して不服がある場合、まずは管轄の国税局に異議の申し立てをし、管轄の国税局が処分内容を変更するのかどうかの結論を出す。この段階で納税者側の異議が100%認められることはほとんどないので、この決定に不服なら、国税不服審判所に審査請求を行い、裁決を仰ぐ。
それでもその結果に不服なら、舞台を裁判所に移して行政訴訟という段取りになるのだが、武田の場合は、大阪国税局への異議申し立ての段階にあった08年7月に、日本の課税当局が米国の課税当局と相互協議をするよう申請。3年以上に及んだ日米課税当局の相互協議が決裂したのが昨年11月のこと。そこで大阪国税局での異議申し立て手続きが再開され、今回の結論に至った。
相互協議のサポート業務はビッグ4の独壇場
武田が異議申し立て手続きの途中で申請した「相互協議」とは、日本の課税当局に、海外の課税当局と交渉してもらう外交交渉のことをいう。
移転価格課税は、日本の親会社と海外の子会社間の利益配分について、日本、あるいは子会社がある現地国の課税当局が異議を唱えることによって発生する。