3人に1人の高齢者を支えるシステムが限界に近付いている? 70代が現役で働く「超高齢社会」になった日本の深刻
たとえば、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(2018年5月、厚生労働省)などをベースに作成された資料によると、2025年から2040年には次のように増加するとシミュレーションされている。
●医療……47.4兆円(同)→68.5兆円(同)
●介護……15.3兆円(同)→25.8兆円(同)
この数字は、2040年には公費=税金で、年金17.2兆円、医療費32.2兆円、介護14.2兆円を負担しなければならない勘定になる。3つを単純合計すると「63.6兆円」になる。現在の財政支出の合計は100兆円ちょっと。
厚生労働省などの試算によれば、年金・医療・介護の費用は今後も増加が続き、2040年には現在よりかなり大きな負担になる見通しだ。社会保障費はすでに国の歳出の大きな割合を占めており、財政の持続可能性が問われる。
欧州では人口減少に対応して移民を受け入れ、移民の定住化で税収を増やし、社会保障制度や社会インフラ整備のコストを賄ってきた。日本でも外国人労働者の受け入れや在留制度の見直しなどが議論され始めてはいるが、欧州ほど制度的・社会的な議論や移民の定住を前提とした政策設計は十分とは言えない。財政危機とも密接な関係のある人口減少について、タブーなき議論をすべき時期に来ているのかもしれない。
経済の原動力は豊富な個人消費と旺盛な労働市場?
超高齢社会は、経済全体でみると人口減少による個人消費の縮小が、企業の収益を減らし、法人税収の減少にもつながっていく。個人の所得税や住民税なども減少し、結局のところ超高齢社会は経済を低迷させ、国家や地方自治体の税収も不足させる。
問題はその対策だが、すでに道筋は見えている。人口減に対しては、AIを使ったロボットや自動運転の車の開発など、イノベーションによって人口減少に対処する方法だ。建築業界でも、自動化されたロボットが作る住宅を、最少限の人間が組み立てるといった方法になる。とはいえ、飲食業やサービス業、介護といった人間性が不可欠な業種には限界がある。
超高齢社会という世界でもあまり経験したことのない事態に日本はどう生き残っていくのか……。移民問題をスルーできない現実を踏まえて、対策を急ぐ必要があるだろう。超高齢社会を経験する日本社会は、介護や終身医療といった分野で、世界に輸出できるようなノウハウを開発する方法もある。
現在は、76歳のロックシンガーがニューアルバムをリリースする時代。70代はまだ引退するには早すぎるのかもしれない。
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