高校入学後に行われた初回の三者面談も、いきなり志望校はどこかなど、進路の話がほとんど。大学についてさほど調べていなかったものの、「家を出たい」という希望はあり、志望校欄には母方の祖母の家からでも通えそうな「大阪大学」と書いた。
学校は「高みを目指せ」と豪語するだけのことはあり、かなりの数の補習があった。平日の放課後はもちろん、土曜日も補習のために学校に通うことも多く、夏休みなどの長期休みも当然のように補習が組まれた。
そのため高1の段階では塾に通わない同級生もたくさんいたが、千鶴さんは英語専門塾を続けながら、別の塾で国語と数学の授業を受けた。2つの塾に支払っていた受講料は月に4万1000円ほど。これに季節講習などの追加料金がかかり、公立高に通っていても結局、教育費は大きな負担となっていった。
やがてオープンキャンパスや大学見学に行くなどし、志望大学についてぼんやりとだがイメージを掴み始めた千鶴さん。「進学を機に実家を出ること」「英語を軸にした学びができる大学」を中心に志望校選びが本格化した。
一方、両親は「一人暮らしをするのなら国公立」「私立なら、京都の祖母宅から通える範囲にすること」という条件をつけた。
例えば、見学に行った上智大学の場合、もっとも安い文系学部でも、授業料と諸費用を合わせた金額は年間118万円を超える。初年度はこれに加えて入学金20万円も必要となる。一人暮らしの費用を仮に1カ月10万円と見積もっても、4年でかかる費用は1000万円近くになってしまう。
3人以上の子どもがいる多子世帯を対象に、大学の授業料を無償化する国の制度が始まったが、3人以上いない家庭ではこの恩恵を受けられない。また、この制度は子ども3人全員が学生である必要があり、3人きょうだいの場合、長子が卒業してしまえば、下の子たちは制度を使えなくなる。
私立大学にはいろいろな奨学金制度もあるが、それを使ったとしても「私立大+一人暮らし」のハードルは高い。
さまざまなことを考えた結果、千鶴さんは第一志望を国立の東京外大とする方針で受験プランを組むことに決めた。
滑り止めとして受ける私立は関西圏だけでは選択肢が限られたため、結局、首都圏の大学も候補に入れ、上智と立教、獨協、ICU、同志社の東京会場受験を受けることにした。第一志望の東京外大の模試の判定はだいたいB判定。がんばり次第で合格は可能という状態には仕上がっていた。
受験のためのホテル探し
志望校が決まると親のサポートも本格化した。地方から都内の大学を受ける場合はホテルの手配が必要で、母親は当時の様子を「まるで旅行代理店のようでした」と振り返る。
都心から少し離れた東京外大とICUは、すぐ近くのホテルとなると限られる。入試の時期には客が集中するためか、値段が普段の2倍となるところもあるほどだ。ホテルの数が少ないので早めに予約をしなくては埋まってしまう可能性もある。
そのため母親は千鶴さんが高3になるとすぐホテルのリサーチを開始し、夏には予約を取りはじめた。
まずは、私立入試のための東京滞在に3カ所のホテルを予約した。上智の入試は四ツ谷のホテルを3泊抑え、ICUのために東府中のホテルを1泊、同志社の東京会場入試と立教のために両国のホテルを予約した。そして、東京外大の2次試験のためにも大学近くのホテルを押さえておいた。
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