ラーメンの麺に小麦を使わないことは大きな制約であると同時に、新しい発想で麺作りを組み立て直すチャンスでもあった。

筆者が実際に「GF黄金の鶏油しょうゆラーメン」を食べてみると、その挑戦の大きな成果を知ることができた。
まずスープの段階で心を奪われる。みやざき地頭鶏(じとっこ)の丸鶏を贅沢に炊き上げた鶏清湯は、濁りのない澄んだ色合いで分厚い鶏の旨味を演出している。そこに黄金の鶏油が浮かび、醤油の芳醇な香りも相まって、あっさりしていながら素晴らしいスープに仕上がっていた。
専門店の一杯に引けを取らないどころか、素材の良さを最大限に引き出していて、力強ささえ感じるものだった。

そして何より印象的だったのは麺の進化である。当初は丸麺で提供されていたものが、新たに角麺へと刷新された。
口に含むと、噛むごとに確かなコシが返り、角のエッジが実にラーメンらしい。丸麺のつるりとした喉越しも魅力ではあったが、この角麺はスープとの絡みが一段と良く、麺としての主張がしっかりと感じられる。スープと麺が一体となって口中に広がる瞬間、従来のグルテンフリー麺では考えられなかった一体感が生まれた。
「ビーフン」メーカーの知見が生きたイノベーション
開発の過程には並々ならぬ執念が込められている。
角麺を完成させるまでに試したダイス(押し出し用の穴のあいた型)は18種類にのぼり、厚みの調整はわずか0.05ミリ単位で繰り返された。2020年10月よりボストンの人気ラーメン店「Tsurumen」大西益央氏と共同で4年以上の歳月を費やして磨き上げられたその努力が、いま実を結んでいる。
小麦のグルテンに頼らずともラーメンとして成立する麺を作り出すというのは、単なる技術的な工夫にとどまらず、ラーメンという料理そのものの可能性を広げる挑戦であった。

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