熱中症対策で「塩分摂取は必要」と考える人の盲点。医学会では「摂らなくていい」との助言も…「正しいのはどっち?」専門家に聞いてみた
熱中症対策としての塩分摂取。摂ったほうがいいのか、摂らなくてもいいのか――。栄養と健康増進、病気予防対策に詳しい鳥取大学医学部社会医学講座健康政策医学分野教授の森田明美さんは、自身の見解について次のように話す。
「激しい運動によって大量の汗をかいたときや、長時間、高温の場所で労働したとき、下痢などで食事が十分に摂れないときなどには、やはり経口補水液や、塩あめなどで塩分の補給が必要となると考えています。
一方、普通の日に水分補給をする場合は、意識して塩分を追加補給する必要はないでしょう。塩分や糖分が含まれていないお茶や水で十分です」
経口補水液は、私たち人間の体液の濃度に近い生理食塩水と同じ性質を持っているため、腸管からの吸収スピードは水やスポーツドリンクより早く、効率がいい。熱中症にかかりそうなときに飲むことで、素早く体に吸収され、熱中症を予防してくれる。
同学会も「大量に汗をかいた時や脱水症状には大変役立ちます」と書いており、さらに詳細ページでは「発汗が多い場合には、水分とともに少量の塩分を補給することが望まれます」としている。
森田さんの意見も踏まえると、「状況や必要に応じて塩分は摂ったほうがいい。これらのドリンクを飲んだほうがいいときもある」ということになるだろう。
「習慣的に経口補水液やスポーツドリンクを摂っていると、塩分を過剰に摂取してしまうことになり、血圧が上がったり、血圧の下がりが悪くなってしまったりする。大事なのは摂り方です」(森田さん)
「こむら返り」は塩分不足か?
ちなみに、「足がつる(こむら返りを起こす)のは塩分が不足している」と聞いたことがある人もいるのではないか。ここにも注意が必要だ。
森田さんによると「足がつるのにはさまざまな原因があり、塩分不足はその一部」だそうだ。確かに、足がつる原因にはマグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウムなどミネラルの不足がある。
だが、足がつるほどナトリウムが不足することは、通常の状態では考えにくく、ほかのミネラルによる可能性が高いという。足がよくつる人は、乳製品や大豆製品、葉野菜、魚介類など、ミネラルの多い食事を心がけることも大切とのことだ。
さて、ここまで読んで塩分の摂りすぎで血圧が上がっているかもしれないと、不安に思う人もいるだろう。
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