紅茶は基本的に健康的な飲料だが…「避けた方がいい人、飲んだ方がいい人」の違いは何か?

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以上を考えると、次のようにまとめられると思います。

・紅茶が腎結石のリスクを上げるという科学的根拠には乏しいが、腎結石は「食事としてのシュウ酸摂取」を含む様々な要素に影響される複雑な話である
・腎結石を一度経験した方が、シュウ酸摂取に気を付けるのは理にかなっており、その意味で過剰な紅茶の摂取を避けることも間違っているとは言えない
・また、紅茶摂取により腎結石リスクを下げるかどうかもはっきりしておらず、そのために紅茶を多量に飲み始めるのも妥当性に乏しい
・しかし、紅茶が好きで既にたくさん飲んでいる方が、腎結石リスクを恐れて紅茶の摂取量を減らす必要性はそこまでない(とくに腎結石を一度も経験していない方に関しては)。紅茶は心血管病予防などの他の良い効果も示されている。
・腎結石を経験したことがあって紅茶が飲みたい場合、カルシウム摂取や十分な水分量の摂取など、他の生活習慣も考えるべき。

なお、病院によっては、腎結石の組成を確認し、シュウ酸が原因でなければ紅茶などの制限は不要、とはっきりさせる所もあります。

結局紅茶を含む「食事パターン」が大事

紅茶は、心血管病、特定のがん、認知機能などに対し、良い影響をもたらすことが示されています(※8)。心配することと言えば腎結石くらいで、基本的に健康的な飲料と考えてよいです。

そして結局、紅茶をどれだけ飲んでいるかということよりも、紅茶を含む食事パターンというものが本質的に重要になってきます。

コーヒーの代わりに紅茶を飲んでも多分健康効果はそれほど変わらないでしょうし、コーラの代わりに紅茶を飲めば健康に良いでしょう。紅茶自体もストレートで飲むなら良いですが、毎回砂糖を入れるなら健康には悪影響を及ぼす可能性があります。

上述してきたように、「紅茶は健康に良いか悪いか」は簡単な話ではありません。「一つの食材の善悪を決める」ような議論は、概していろいろな状況を無視しており、あまり本質的な問いとは言えません。

個人が科学を活用することを考えるにあたっては、食習慣という「総合的な食事の質」こそが、食事を最適化する上で最も参考になる指標です。その上で栄養素について個別に考えていくと、自分にとって最高の食習慣を形成できるはずです。

【参考文献】
※1. Eating, Diet, & Nutrition for Kidney Stones - NIDDK [Internet]. Natl. Inst. Diabetes Dig. Kidney Dis. [cited 2024 Apr 19];Available from: https://www.niddk.nih.gov/health-information/urologic-diseases/kidney-stones/eating-diet-nutrition
※2. Wang J, Luo G, Niu W, Gong M, Liu L, Zhou J, Zhou X, He L. [Risk factors for the kidney stones: a hospital-based case-control study in a distric hospital in Beijing]. Beijing Da Xue Xue Bao. 2013;45:971–974.
※3. Liu D, Wang J, Chen Y, Liu F, Deng Y, Wang M. Tea intake and risk of kidney stones: A mendelian randomization study. Nutrition. 2023;107:111919.
※4. Barghouthy Y, Corrales M, Doizi S, Somani BK, Traxer O. Tea and coffee consumption and pathophysiology related to kidney stone formation: a systematic review. World J Urol. 2021;39:2417–226.
※5. Pearle MS, Goldfarb DS, Assimos DG, Curhan G, Denu-Ciocca CJ, Matlaga BR, Monga M, Penniston KL, Preminger GM, Turk TMT, White JR, American Urological Assocation. Medical management of kidney stones: AUA guideline. J Urol. 2014;192:316–324.
※6. ※5に同じ
※7. Bao Y, Tu X, Wei Q. Water for preventing urinary stones. Cochrane Database Syst Rev. 2020;2020:CD004292.
※8. Yi M, Wu X, Zhuang W, Xia L, Chen Y, Zhao R, Wan Q, Du L, Zhou Y. Tea Consumption and Health Outcomes: Umbrella Review of Meta-Analyses of Observational Studies in Humans. Mol Nutr Food Res. 2019;63:e1900389.
濱谷 陸太 ハーバード大学医学部講師/医師

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はまや りくた / Rikuta Hamaya

専門は予防医療、特に食事やサプリメントを用いた予防的介入の個別化。循環器内科医として臨床経験を積んだ後、ハーバード大学で疫学博士を取得。現在はブリガムアンドウィメンズ病院で予防医療研究の講師(インストラクター)を務める。また、日本で株式会社エブリワン・コホートを創業し、日本の予防医療を発展させるべくCEOとして活動中。3児の父。

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