NPBの場合、球団数は1958年にセ・パ12球団体制になってから67年も同じ体制で来ている。観客動員は2005年以前の数字は「球団発表」で、信憑性に乏しいが、1958年は1006試合で530万人だったのが、昨年は858試合で2668万人まで増えた。1試合の動員は5000人超から3.1万人と約6倍に増えた。
しかし、球場のキャパシティは3万~4万人だから、すでに飽和状態が近くなっている。観客動員を増やすには、今の143試合をMLB並みの162試合程度に増やすことも考えられるが、今以上の過密日程には、日本プロ野球選手会なども難色を示しそうだ。
「日本の人口は減少に転じている。少子高齢化が進んでいるのだから、これ以上プロ野球の観客数を増やす必要はない」とは多くの日本人が口にする理屈だが、プロ野球は「配給品」「支給品」ではなく、公共性があると言っても営利事業だ。スーパーマーケットが「日本の人口が減っているから、店舗数を増やすのを控えよう」とは思わないのと同様、シェアの拡大を目指して積極的に動くべきなのだ。
プロ野球選手会はエクスパンションを要望
今年の7月、NPBの12球団オーナー会議では、ファームの3地区制への再編を決定し、球団数の増加も視野に入れると発表したが、プロ野球選手会は「1軍でやるべきじゃないか。エクスパンションで、1軍で活躍できる選手を見せていくほうが野球の普及、活性化になる」と提言した。選手会が、選手の活動のステージが拡がるように働きかけるのは、当然の話だ。
しかし、NPBのエクスパンションを考えるうえでは、決定的な問題が存在する。MLBのエクスパンションは、ニューヨーク・ヤンキースやブルックリン・ドジャースなど既存球団のオーナーが提唱したわけではない。
MLBの最高権力者であるコミッショナーが、トップダウンで決定を下し、新球団の設置、新たな本拠地の策定、既存球団の移転などの大事業を推進したのだ。まさに豪腕と言えるが、MLBのコミッショナーはいつの時代もトップセールスマンであり、MLB全体の市場拡大、収益増大を考える責務があったのだ。
球団の立場で言えば、球団数の増加は、移動費用など新たなコストを生むし、新球団が顧客獲得の上で競合する可能性もある。もろ手を挙げて賛同、とはいかないはずだが、コミッショナーの決定には逆らえないのだ。MLBの歴代コミッショナーは、大胆な施策を次々と打ち出して市場拡大に成功してきたのだ。


















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