都会の非電化貨物線「越中島支線」旅客化できるか 亀戸から臨海部へ、かつては「新橋直通」の構想も
需要予測は沿線開発の有無や周辺バス路線の再編を実施するかどうか、運行間隔(複線整備で5分、単線整備で10分)などの条件によって大きく異なり、1日の利用者数は8500~2万3000人。建設費や運営費の公的支援を条件にしても1万人以上の利用がないと採算性の確保は難しく、費用対効果(B/C)は1万5000人以上の利用がないと便益が費用を上回る「1」以上にはならないという厳しい結果になった。
このため江東区は2003年12月、亀戸―新木場間を結ぶLRTを「長期的な構想」として位置付けることを決め、検討を事実上凍結した。
それから20年が過ぎた2023年、江東区はLRTの再調査を実施する方針を示し、現在は「再調査に向けた検討」を行っている。ただ、同区によると建物物価が2002年度の調査時と比較して45%ほど上昇しており、事業費の大幅な増加は必至だ。

専用線の橋梁は遊歩道に
そもそも、東京メトロが有楽町線分岐線の豊洲―住吉間を事業化し、2030年代半ばには開業する予定になった。越中島支線から西へ700~800mほどずれているとはいえ、江東区を南北に縦断して総武本線と臨海部を直結するルートという点は同じ。越中島支線の早期旅客化の意義が低下した面は否めない。
江東区としても、まずは有楽町線分岐線の整備に注力し、越中島支線の旅客化はその後の話になるだろう。とはいえ近年深刻化しているバス運転士不足を考えると、運転士1人あたりの輸送力が大きい軌道交通への転換は解決策のひとつにはなりうる。まずは「再調査に向けた検討」の今後の推移に注目したい。

ちなみに、東京都港湾局専用線の豊洲と晴海を結ぶ橋梁(旧晴海鉄道橋)は専用線の廃止後も放置されていたが、日本で初めて鋼ローゼ桁橋を採用したという歴史的価値もあり、遊歩道化して残すことが決定。このほど工事が完了し、今年2025年9月19日から一般開放される。一般開放されたら、貨物列車が走っていた時代に思いをはせるだけでなく、「新橋行き旅客列車」の姿を想像しながら歩いてみようと思う。

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