旅費+サービスで400万円「介護クルーズ」の中身:豪華客船で自立目指すリハビリ100日間→「歩けないままなら返金」と強気の主催者の"想い"
2人の1日は、朝7時に起床するところからスタート。8時に朝食をとり、午前中は船内新聞をながめたり、アクティビティに参加したりする。もちろんゆっくりくつろぐ日もある。
昼食後、午後からはパワーリハ。ウォーキングやマシントレーニングで体を動かし、2時間みっちりプログラムを受ける。そして夜はしっかり休む。
クルーズをあますことなく楽しみたいという好奇心はあるが、無理は効かない。世界各国への周遊で船内の環境は変化するため、発熱や風邪などで体調を崩す人も。おのおのが無理のないスケジュールで参加している。
想像以上の「よい変化」が訪れた
そのなかでもAさんは積極的にパワーリハに参加している1人だ。「始めはね、私にはまだまだ必要のないプログラムだって思ってたんです」と言う。しかし、パワーリハを続けると、歩く力だけでなく、本人も想像していなかった“よい変化”があったそうだ。
「実は、20年間左半身が麻痺していて、左手が動かせなかったんです。でも、パワーリハを受けたら関節がゆるんで動くようになったんです。
服の脱ぎ着がとってもラクになりました。歩けるようになった以上に、手が動いたことに正直驚きましたね。介護クルーズに参加したなかで、一番大きな変化でした」と声を弾ませるAさん。
「あきらめずに体を使い続ければ、奇跡は起きるのだ」と、話を聞いた筆者も正直驚いた。話を聞いた2人からは、元気で長生きしたいという希望がみなぎっている意欲を感じた。
そもそも森さんがポラリスを設立した理由は、歩けなくなってしまう要介護高齢者が増えていることを憂慮したからだった。
これまで介護の世界では、国の介護方針や介護保険の仕組みによって、要介護者ができないことを手伝う“お世話を中心とした介護”が推進されてきた。「この結果、車いすに頼るようになったり、寝たきりになったりと、歩けない高齢者が増えていったのです」と森さんは言う。
その後、2021年には介護報酬改定の目玉の1つとして「自立支援」が掲げられた。これにより、日本における介護方針は大きく方向転換した。
「自立支援とは“いつまでも自分で歩ける、寝食できるようにするサポート”をいいますが、介護をとりまく世界では、自立支援についてほとんど研究事例がなかった。それを私たちがやろうとしたのです」(森さん)

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