『ちはやふる -めぐり-』はなぜ"恋愛を控えた"のか? 贅沢品としての青春を誠実に描いた、静かな名作の功績を考える
このように、本作は「時間を失ってもいい」と思える対象に出会えていない若者や、何かを成し得なかった若者が、それでも何かを見つけようとする物語なのだ。

バラバラになりかけてもより強く繋がるチームに成長していく(出所:日テレドラマ公式チャンネル)
恋愛主体ではなく、他者との関係性そのものがテーマに
全10話、たっぷりと時間を重ね物語が進んでいくのはドラマならでは。しかし映画版に親しんだことがあると、ゆったりしすぎ、と感じることもあるだろう。
さらに映画版との大きな違いに、恋愛の描き方がある。
映画では千早(広瀬すず)・太一(野村周平)・新(新田真剣佑)の三角関係の進展がみどころであった。しかしドラマ版の恋愛要素は、ささやかな表現にとどまっている。恋愛はあくまでサブテーマ的に描かれ、スポットが当たっているのは友情や家族愛だ。

むしろもっとアピールしてほしかった、風希(齋藤潤)からめぐるへの恋心(出所:日テレドラマ公式チャンネル)
本作に限らず、青春ものにおける視点の置き場がここ数年で大きく変わっている。たとえば、ドラマ『silent』は恋愛の枠を超えて、「喪失」や「再生」を通じた人間関係の再構築にフォーカスしていた。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ビジネスの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら