京都に進出、JR東海「ホテル拡大戦略」の深慮遠謀 既存ホテルを買い取り「マリオット」ブランドに

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京都と奈良。そして世界大手ホテル各社との連携。なぜJR東海はホテル事業の強化を急ぐのだろうか。しかも、これまでのような自社用地の開発ではなく、外部から土地を取得しての開発だ。ホテル市況が悪化した場合の事業リスクは自社用地を開発する場合よりもはるかに高い。

そもそも東海道新幹線がもたらす収入はJR東海の単体売上高の約9割、連結売上高の約7割を占める経営の屋台骨である。在来線も含む単体決算を見ると2024年度の売上高利益率は実に38%に及ぶ。本業がここまで強ければ、あえて事業の多角化に打って出る必要はないようにも思える。

コロナ禍で「自由な発想」へ転換

従来のJR東海は新幹線の安全・安定・サービスの改善に注力し、リニア中央新幹線の建設も進み、新しい分野への進出は積極的とはいえなかった。しかし、コロナ禍で新幹線の利用者が急減し、収支が一気に悪化したことで、JR東海は従来よりも一歩踏み込んだ増収策に踏み込んだ。

丹羽社長は以下のように説明する。「従来は駅ビルのような自社の不動産を活用してホテルなどを展開していたが、コロナ禍後はもう少し踏み込んで、駅を飛び出して新たな不動産を取得するなど、自由な発想でやっている。ホテルだけではなくオフィスももちろんやるし、いろいろな事業にトライする」。

JR東海 丹羽社長
JR東海の丹羽俊介社長(記者撮影)

2023年4月に就任した丹羽社長は社員に対して日頃から「非鉄道事業についてさまざまなチャレンジをしていこう」と呼びかけてきた。社員からアイデアが続々と寄せられ、その中から、「貸切車両パッケージ」「推し旅」といった営業施策が誕生した。

貸切車両パッケージは新幹線を貸し切りにしてオリジナルのアナウンスや装飾などを施して、イベントなどに自由に活用してもらうというサービス。企業からのニーズも強く、プロレス団体が借り切って車内でプロレスを行うというユニークなイベントも行われた。推し旅は新幹線を利用してアイドル、アニメキャラなどの「推し」を応援するイベントやツアーに参加できるというサービス。どちらも従来のJR東海では考えられなかった施策である。

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