相次ぐ被害「人を恐れないクマ」はなぜ増えた?最前線の研究者が教える「熊害が発生するワケ」と「遭遇時に身を守る対策」、そして共存への可能性

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最初は人間の存在を気にしながら、夜間に恐る恐るやってくるのですが、だんだん日中や、人間がいるときにも出てくるようになり、厄介な害獣になってしまいます。そういう点では、クマに餌をやることは論外です。絶対にやめてください」

秋にドングリなどが不足する年には、人里への大量出没が起こりやすい。

「北海道にはドングリ以外の食べ物も比較的多くあるのでヒグマの大量出没はまれですが、本州のツキノワグマではその傾向がはっきりとしています」と、坪田教授は付け加えた。

クマと遭遇してしまったら?

筆者がどうしても知りたいのは、起きてほしくはないし、確率としては低いのだろうけれど──「もし運悪くクマに遭遇してしまったら、どう行動すればいいのか」ということ。みなさんも気になるだろう。

坪田教授によれば「慌てずゆっくりと距離をとる」ことが大切だという。

「慌てて逃げると、クマは本能的に追いかけてきます。そして、襲われてしまったときは、急所となる頭と首を守って腹ばいになる、いわゆる『死んだふり』をするか、あるいはダメ元で抵抗することくらいしかできません。死んだふりでも、反撃でも、難を逃れた人はいます。が、それはクマ次第です。

クマよけのスプレーも、あくまで最後の手段ですね。カプサイシン入りのスプレーでクマを撃退した人はいます。クマと出会ったときに何も持っていないよりはいいでしょう。ただし、性能に問題のある商品が多いので、必ず実績のある製品を携帯するようにしてください」

そう坪田教授は釘を刺した。

やはり、襲われたときの対応についていくら考えたところで、大きな意味はないのだろう。

交通安全を考えるときに、重要なのは「車両と衝突してしまったときの動き方」ではなく「そもそも車両と衝突しないための心がけ」である。それと同じで、クマに対しても「そもそも出会わないようにすること」を第一の原則としなければならない。

熊害や人里への出没が増加するなか、課題は現場対応の体制づくりだ。現在は野生鳥獣を専門としない市町村職員が、熊害の対応を余儀なくされることも少なくない。

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