質問を受けたらまず「ありがとうございます」、就活の現場で広がる"いちいち感謝"が鬱陶しい理由

対面コミュニケーション力の貧しさ
そして、こういった同じフレーズを何度も聞かされるほうは、わずらわしく感じてしまう。
「『ありがとうございます』も繰り返し使うと、ありがたみが少なくなります。受け手は内心、『毎回、言わなくてもいいよ』と思っている。
つまり“感謝”のニュアンスは残念ながら伝わっていません。とりあえずそう言っておけばいいという感覚は、受け取る側にも伝わってしまうんです」
なぜ、そんなことになっているのか。合田さんは若い世代の「対面コミュニケーション力の貧しさ」も背景の一つでは、と見る。
「例えば改まった場面での会話にもかかわらず、『どのようなきっかけで始めたのですか』と言うべきところを『何きっかけですか』、『どのようなご関係ですか』と問うべきところで『何つながりですか』と言ってしまったり。
コロナ禍の影響もあって対面コミュニケーションの機会が少なく、いざ仕事を任されるようになったときに言葉遣いに不安を感じ、その不安を解消したいがために『これを使っておけばいい』といういくつかの数少ない『便利な言葉』で毎度毎度、すませようとしてしまう。
そんな傾向があるのかなと思います。そんな言葉の一つが『ありがとうございます』なんです」
合田さんは1年ほど前、ある大学で教職員向けに学生の言葉遣いの指導法について話をした際、就職活動を担当する教職員が学生に「質問を受けたらまず『ありがとうございます』と言いなさい」と指導していると聞いて、驚いたと言う。
「丁寧な印象を与えるから、考える時間ができるから、がその理由でした。もちろんすべての場合で『ありがとうございます』がNGというわけではありません。ただ、なるべく使わないことを基本にするほうがいいでしょう。
いつも同じ反応よりは、『ありがとうございます』の代わりに『~というお尋ねですね』『前にも同じような質問を頂戴しました』『それについては、~という視点でお答えしてもよいですか』など、バリエーションのある受け答えができるとよいかなと思います」
(AERA編集部・小長光哲郎)
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