質問を受けたらまず「ありがとうございます」、就活の現場で広がる"いちいち感謝"が鬱陶しい理由

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一方で、意識的だった面もあるのかもしれない、とも女性は言う。

「質問を受けた瞬間に、自分が考える時間を作ろうと思ったとき、『ありがとうございます』で一拍置いてから話し始めていたかもしれません」

”あり”なシチュエーションとは

以前の取材、計7回の「ありがとうございます」はさすがに強い印象が残ったものの、丁寧な印象で悪い感じはしなかった。なぜか。

合田さんは、相手の問いかけに対し、まず「ありがとうございます」と答えてから話し始めても問題ないシチュエーションもありうる、と話す。

「例えば企業の研修で自社製品のプレゼンをするとき。直後に参加者から質問を受けるケーススタディーも行うのですが、的確に答えようとするあまり、無言で考え込んでしまうシーンもときに生まれるんです。

これは質問する人の心証が良くありません。『ご質問ありがとうございます』とまず言ってから、回答を落ち着いて考えましょうとアドバイスしています」

また、企業が厳しい追及を受けるような記者会見での場面。極端に厳しい質問は別として、ごく紳士的に聞いてきた場合には、まず「ありがとうございます」と答えるのも「あり」だと合田さんは言う。

「自分たちへの配慮、あるいは企業体質改善への提言をもらったことへの感謝を示す意味での『ありがとうございます』で、防御一辺倒ではない受容する姿勢を示せるからです」

では、「ありがとうございます」と言われた側が違和感や不愉快な思いを持ってしまうケースが多々なのは、なぜか。

合田さんは「ポイントは、『ありがとうございます』を使わなくていい場面で使うこと、毎回言わなくてもいいのに使うことへのわずらわしさです」と指摘する。

「就職面接で『ありがとうございます』が頻発されることへの違和感は、その場が『質問するのが当たり前の場』だからです。当初は質問してくれたことへの感謝だったかもしれません。

それが、『とりあえず丁寧な言い回しを使っておけばいい』という発想になり、次第に本人も無意識の口癖になっているように感じます。

社会人の『させていただきます』や、『こちらが新製品になってございます』『大変使いやすい仕様になってございます』などの頻発にも、同じことが言えます」

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