「国宝」級のヒット邦画に?妻夫木聡主演の映画《宝島》が公開前から注目集めるワケ。映画関係者が「社会派」の本作に期待する理由を徹底解説
コザで交通事故を起こしたアメリカ兵を基地に逃がすまいと住民たちが集まり、アメリカ軍の黄色ナンバーの車を次々に横転させ、火を放つ。戦後、抑圧されてきた沖縄の怒りが爆発し、コザの街が燃えた。
それは「コザ暴動」とされる史実だ。映画は、まるでその場でカメラを回していたかのように、そこで起きた現実を詳細に生々しく、激しく映し出す。その時代のリアルを通して、史実の闇に光を当て、埋もれた真実とそこにあった人々の思いをすくいあげる。
そんな映像は、われわれの心を戦後の占領下の沖縄に誘う。
『宝島』は、史実に基づく当時のリアルな沖縄社会を映しながら、警察とヤクザという相対する立場になり、すれ違いながらもそれぞれオンの行方を追ってきたグスクとレイの人生の交錯と衝突が描かれる。
本作のベースにあるのは、あの日を境に消息不明になったオンの身に起きたことと、その後の彼の消息と生死をめぐる、20年にわたるかつて仲間だった戦果アギヤーの人生だ。

大ヒットした『国宝』との共通点は?
本作には『国宝』との共通点がある。『国宝』は、伝統芸能である歌舞伎の世界を舞台に、その特有で閉鎖的な社会のリアルを映しながら、名門一家の跡目争いにおける2人の登場人物の血筋と芸の技能の狭間の葛藤と対立を、ヒリつかせるような生き様を通して描いた。
一方、『宝島』は、戦後のアメリカ統治下から日本返還までの沖縄を舞台に、抑圧された島民の鬱屈と、国政の犠牲になった理不尽な社会の現実をまざまざと映し出す。そこに、時代に翻弄された若者たちが巻き込まれた事件と、20年かけてその真相に迫る物語が埋め込まれている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら