クラブW杯は全敗、30年でJ1優勝1回、埼スタ管理者から除外… 三重苦にあえぐ「浦和レッズ」が完全復活へ掲げる"のろし"
クラブとしてはこの大舞台に向けて、大胆な投資にも踏み切ったが、結果として収支の見通しは極めて厳しい。そういった金銭的な側面も含めて、クラブW杯は期待どおりの結果とはならなかった。
「当然、私は近年の成績に満足していません。現状打開策をクラブ全員で真剣に考えています。今年からトップチームが社長直轄になったのを機に、クラブアナリストというポストを新設しました。さまざまなデータを出してもらいながら、可視化した評価基準を作っているところです。多角的な観点からトップチームの現状と課題、改善点などを抽出することが浮上のカギだと考えて、動き出しました。
昨年からは堀之内聖スポーツダイレクター(SD)が加わった『フットボール委員会』を社長直轄の諮問機関として設け、月1回のペースで分析データの報告を受け、現状把握に努めています。私は経営者としてどういうサポートをしていくのが最適か。浦和を勝てるチームにできるのか。その答えを見出すために、意思疎通を大事にしたくて、アクションを起こした形です」(田口社長)
選手にも伝播し始めた田口社長の思い
経営陣と強化担当者が日常的にコミュニケーションを図れるような関係性を構築できれば、選手の補強や移籍に関してより迅速な対応が取れる。
浦和の場合、親会社である三菱重工や三菱自動車の出身者が代々社長を務める形で、「現場に任せる」というスタンスが長く続いたのだろう。田口社長も基本的には同じ姿勢をとるが、前身の三菱重工でプレーした元選手という経歴も背景にあり、「強いレッズを作りたい」という熱意と意欲は並々ならぬものがある。
「浦和レッズは本当に恵まれたクラブです。成績が思わしくないときでも、パートナー企業やファン・サポーターの皆さんが支えてくださり、グッズも手に取って応援していただける。本当にありがたいことです。それなのに、Jリーグ33年の歴史の中でリーグタイトルを獲得したのは1度だけ。この事実は真摯に受け止めなければなりません。
そのことを今シーズン始動日に選手たちに、嫌われる覚悟で言いました。私たち経営陣が退出した後、堀之内SDも同じようなことを投げかけたようです。それを受けて、西川(周作)や原口(元気)、関根(貴大)といった在籍年数の長いベテラン選手たちがメディアに向けて『僕らは30年で1回しか優勝していない』という発信をしているのを見て、熱い思いをひしひしと感じました」(田口社長)
2023年2月に田口社長が就任した後、浦和は人事評価制度の見直しを実施。約60人規模のスタッフがより高いモチベーションを持って働けるような環境づくりも精力的に行っている。今年度中に点在しているオフィスの集約化も進めるという。
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