
ドラッカーとポラニーに共通するのは、人間や社会を土台から切り離し、経済を自己目的化してしまうシステムの危うさへに対する鋭い洞察である(写真:figure/PIXTA)
現代社会の閉塞感の根本原因は、グローバル化や自己責任論だけでは片付けられない。クララ・E・マッテイ氏の新刊『緊縮資本主義: 経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか』は、経済危機を乗り越えるための必然的な政策と信じられてきた緊縮策が、実は資本主義の秩序を守るための「政治的秘策」であったと指摘している。なぜ物価は上がるのに賃金は上がらず、未来への不安ばかりが募るのか。その謎を解き明かす知的興奮に満ちた本書を訳者の井坂康志氏が解説する。
常識を根底から覆す知的興奮
なぜ長年にわたって経済は停滞し、私たちの生活は楽にならないのか。物価は上がるのに、賃金は上がらない。社会保障は切り詰められ、未来への不安ばかりが募っていく。
こうした閉塞感の原因を、私たちはいつの間にか「グローバル化の必然」や「自己責任」という言葉で納得させられてはいないだろうか。
クララ・E・マッテイの『緊縮資本主義』は、そうした常識を根底から覆す知的興奮に満ちた一冊である。
本書が突きつける主張は、明快かつ衝撃的だ。
経済危機を乗り越えるために不可欠な政策だと信じられてきた緊縮策は、実は経済的な必然などではなく、資本主義の秩序を守るために富裕層が用いた「政治的秘策」であった、と喝破する。
緊縮は危機の「原因」ではなく、むしろ特定の目的から生まれた「結果」だったというのだ。
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