「ボクシング試合で2人死亡」から考える"コンタクトスポーツと脳の安全性"――研究でわかったリスクと脳を守る対策《医師が解説》

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脳の仕組みと硬膜の位置(イラスト:ぺかまろ/PIXTA)

発症すると、意識がもうろうとする、激しい頭痛が続く、吐き気が止まらないなどの症状が表れます。時間が経つにつれて症状が悪化しやすく、一刻も早い手術が必要になります。

ボクシングのように頭部への打撃を繰り返し受けるスポーツでは、脳の血管が傷つきやすく、普段なら問題ない程度の衝撃でも出血を起こすリスクが高まります。そのため、選手の安全管理が極めて重要になるのです。

アメフト、サッカー選手のリスク

実は、頭部への衝撃が繰り返されるスポーツの危険性は、近年の研究で次々と明らかになっています。

2015年の映画『コンカッション』ではアメリカの法医学者、ベネット・オマル医師が、元アメリカンフットボールのNFL(National Football League)の選手の脳から慢性外傷性脳症を発見し、その危険性を公表しようとする実話を基にしており、ウィル・スミス主演で注目を集めました。

アメリカではNFL選手を長期間調査した結果、元選手の認知症リスクが一般の人の約3倍高いことがわかりました。

また、サッカーでも同様の研究がスコットランドで行われ、約1万2000人の元プロ選手を21年間追跡したところ、認知症の発症率が一般男性の約3倍に上ることが判明しました。

アメリカでは毎年28万人以上の子どもがスポーツによる脳損傷で病院を受診しており、そのうち約半数がサッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツによるものだと報告されています。

こうした状況を受けて、海外では具体的な安全対策が進んでいます。

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