今こそ学ぶべき西郷隆盛の合従連衡論--『日本近代史』を書いた坂野潤治氏(歴史学者、東京大学名誉教授)に聞く

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──「危機」の時代(第6章、25~37)に変わってしまいました。

意に反し、中心人物のいない四分五裂の時代に陥った。民政党が政権を取ると、金解禁。2年後に政友会の高橋是清は金輸出再禁止へ。政権交代の結果、陸軍も統制派と皇道派の二つに分かれ、官界は官界で労働者寄りの内務省と、古い形のままの保守的官僚の大蔵省とがドンパチを繰り返す。20世紀初頭の世界秩序の大変動に合わせるように、日本も10ぐらいのグループに分かれる。

──危機後の「崩壊」の時代は記述がありません。

37年の日中戦争から45年の敗戦までを、どうしても「立体像」として書けない。それ以前は目に見えるようなクリアな格好で6段階に分けた。戦後も同じような6段階によってとらえられるだろう。現在、そのサイクルでいえば、危機から崩壊へ移りかけている。中心人物のいない四分五裂の時代だ。

今40代に人材はいると思う。西郷はこれはと思う藩のこれはと思う人物とつながりをつけ、これはと思う幕府の開明官僚とも交流を持ち、改革に取り組んだ。知性を集めうる横断的な人材はどうあるべきか、あらためて西郷隆盛を勉強してはいかがか。

ばんの・じゅんじ
1937年神奈川県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。東大大学院人文科学研究科博士課程中退。東大社会科学研究所教授、千葉大学法経学部教授を歴任。専攻は日本近代政治史。著書に『近代日本の国家構想』(吉野作造賞)、『日本憲政史』(角川源義賞)、『日本政治「失敗」の研究』など。

(聞き手:塚田紀史 撮影:古澤菜穂/アフロ =週刊東洋経済2012年4月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『日本近代史』 ちくま新書 1155円 461ページ


  
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