口先だけの"ポッと出"の企業には真似できない…100年続く「老舗企業」が貫く《キレイごと》の凄み

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多くの100年企業が、親から子へと経営が引き継がれていきます。同族経営です。

戦後生まれの私には、この「同族経営」が、なかなか理解できませんでした。「自由」と「平等」を是とする戦後教育を受けてきた私にとって、同族以外の社員は社長になれないというのが、どうも腑に落ちないのです。

実力とは関係なく、社長の息子だから、次の社長になる。どこか理不尽さを感じてしまう。「非人権的なモノ」を感じてしまうのです。しかし、100年企業で目にする光景は、「幸せなモノ」でした。

人を大切にしないとか、人権を侵害するとか、そんな空気はない。むしろ、アメリカ型企業でみられる労使の摩擦とは無縁の、温かな関係が築かれているのです。感動的なほど「人が大切にされている経営」がありました。

ポッと出の企業には真似できない「ケア体制」

なぜ、平等とはいえない同族系の経営継承システムで、こうした幸せな職場ができるのか──。疑問でした。そして、「知りたい」「理解したい」という思いが強くなりました。

100年企業では、大企業でないにもかかわらず、給与や福利厚生、教育等々、一般企業では考えられない手厚いケアが社員に施されているケースが多いです。

社員の生活や成長を真剣に支えようとする姿勢が、企業風土として脈々と受け継がれています。

もちろん、すべての企業がそうではありません。しかし、統計をとれば「社員に手厚いケアをする100年企業」のほうが多くなります。普段、労使紛争に立ち会うことの多い我々社労士は、こうした事実にすごく驚いてしまうのです。

研究を進めるうちに、社員を大事することが「経営戦略」の1つとわかってきました。社員を大切にすることで競争力を養い、実益につなげる。それが時代を重ねるなかで、ブラッシュアップされ、完成されたものになっている。

「これは同族経営だからこそ、時間をかけて積み上げられ、蓄積され、安定的に継承されてきたのだ」

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