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口先だけの"ポッと出"の企業には真似できない…100年続く「老舗企業」が貫く《キレイごと》の凄み

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  • 日比野 大輔 労務管理事務所フォージョウハーフ代表、(一社)100年企業研究会代表理事、特定社会保険労務士
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例えば、価格が少し高くとも、付き合いの長い取引先から物を仕入れます。

仕入れ先の経営状態を気づかい、ときには自社が原価割れ(売れば売るほど赤字になる)になってでも、取引先の利益を確保しようとします。短期的にはコスト増になっても、長期的には、経営リスクの低減、利益の持続性につながるという確固たる信念に基づいているのです。

このように100年企業は、人を大切にすることで利益が生まれる事業構造を作り上げています。単なる「道徳」としてではなく、ビジネスモデルとして成立させているのです。

マニュアルがないことで「神対応」が生まれる

旅館や飲食などのサービス業たる100年企業は、顧客1人ひとりへの細やかなおもてなし、いわゆる"神対応"と呼ばれるサービスが強みです。

なぜこうした対応ができるのか? どんな教育をしているのか? 対応マニュアルに書いてある内容とは? それが知りたくなります。しかし、この疑問への答えはこうです。

「マニュアルはないんです」

こうした神対応は、個々の社員から「自然に」生まれるのだそうです。一般的に、良質なサービスを安定的に提供しようとする場合、対応マニュアルを作るのが定石と考えます。しかし、100年企業からは、前述の回答に、こんな発言が続きます。

「マニュアルがあったら、本当のおもてなしは生まれません」

つまり、マニュアルを戦略として「あえて作らない」のです。「ない」のではない。作らないから、神対応が生まれているというのです。どういうことなのか。

ここに私は、老舗ならではの確立された教育プログラムの存在を感じます。マニュアルではなく、「1人ひとりの良心(良知)に基づいて最善の対応をする」という、明確な方針です。そうでなければ、世代を超えた神対応は生まれてはこないはずです。

この教育方針に大きく影響しているのは、江戸時代の儒学教育、とりわけ庶民のなかで広まった心学、のちに陽明学と呼ばれた教育だというのが私の見立てです。

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【親から子へと経営が引き継がれる「100年企業」】

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