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「海水温上昇で魚が獲れない」「外国漁船が悪い」という声もあるが…。九州でアジやサバが冷蔵庫に入りきらないほど"大漁"のなぜ

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  • 片野 歩 Fisk Japan CEO/東京海洋大学 特任教授
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筆者には漁業者からこんな「小さなサバは獲りたくない!」と悲痛な声が届いています。それでも漁獲枠が大量に余っているので、獲らざるをえないのです。獲らなければ他の漁船が獲る「共有地の悲劇」が起きます。

「魚が消えていく本当の理由」

ここまで見てきた事例からわかるのは、資源量の減少には海水温の変化だけでなく、過剰漁獲という構造的な問題が深く関わっているということです。海水温上昇はもちろん資源量に影響を与えます。しかしながら、魚を獲りすぎない科学的根拠に基づく漁獲枠を設定して資源管理を行わないと、そのしわ寄せは漁業者だけでなく消費者を含め社会全体に暗い影を落とします。

国は「国際的に見て遜色がない資源管理制度システム導入」を目指しています。「遜色」とは、はっきり言ってしまえば、北欧・北米・オセアニアなどの漁業を成長産業にしている国々と比較すると明らかに数量管理を重視する資源管理の手法が違ったからです。このため漁獲量が世界の例外として減り続けているのです。

ところが「魚が消えていく本当の理由」が、資源管理制度の不備による過剰漁獲という本当の理由から「海水温上昇」「外国漁船が悪い」「クジラが食べてしまう」などに置き換わってしまっています。もちろんこれらの要因の影響がないとは言いませんが、根本的に資源状態を回復させることができるのは科学的根拠に基づく資源管理なのです。

時間の経過とともに、これまで科学的根拠に基づく数量管理を疎かにしてきたことに対して「何ということをしてきたのだ」とひどく後悔してしまうときが来てしまいます。その気づきをできるだけ早くして舵を切っていかねばなりません。

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