これ、木彫りなの? 《カップに勢いよく注がれるコーヒー》を木で再現したらこうなった!
勝つという目標にこだわればこだわるほど「時間をムダにしたくない」「遠回りできない」と、最短ルートで勝つことばかり考えるようになっていました。そうすると自然と、負けないために、誰かから「答えを教わろう」という姿勢になっていっちゃうんです。
その分、もっとも大切なはずの「自分で考える」ことを疎かにしてしまったんです。テクニックはあるのに、試合で使えない。だから肝心の試合では、いつも勝てない……。
この失敗の経験を生かして、僕は木彫りを始めるにあたって、誰かにやり方を習ったり、正しい手順を調べたりすることを、いっそのことやめてみようと思ったんです。特に僕は趣味で木彫りを始めたので、失敗したって失うものもない。「自分で考える」ことを楽しんでみようと決めました。
いまはYouTubeで検索すれば、木彫りのやり方がきっと山ほど出てくる時代です。特に何も考えなくても、手順どおりにやれば、お手本のような作品をつくることができるかもしれません。
「こういうものをつくりたい」と思って調べて、出てきたつくり方どおりにつくれば、「きっとこうなるだろう」という予想どおりのものができあがります。失敗することも少ないでしょう。
「溶けかけの氷」はどう作った?
僕はというと、電動工具や刃物の使い方など、危険なことややってはいけないことのルール、ケガをしないための方法だけはしっかり調べますが、あとは「どうすれば、つくりたいものをつくれるか」を、一から自分で考えるようにしています。
たとえば「溶けかけの氷」をつくってみたい。だけど、どうすれば透明の氷が木彫りでできるのか、全くわかりません。正解も不正解も、そもそも完成するのかどうかもわからないスタートです。だから、とにかく自分で考えていくしかありません。
考えるといっても、氷を前にうんうん唸っているだけでは、作品はできません。氷を観察してみたり、写真に撮ってみたり、実際に少し彫ってみたりと手を動かしてみます。そして「どうすれば『透明』な表現ができるのだろう?」と試行錯誤しながら理想のイメージに近づけていくんです。
「このとおりにすればできる」という手順があれば、こんなに迷うことはないはずですよね。遠回りせず、最短ルートで氷をつくればいい。それだと失敗することはないけど、同時に、新しいものが生まれることも少ないような気がします。
とにかく行動しながら考えていく。うまくいかなければ「だったらこうしよう」と改善してみる。
このくり返しをするからこそ、誰も見たことのないような新しい表現に挑戦できるのかなと、いまは思っています。
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