「トヨタも明治もCM再開」「すでに世間は中居正広氏の騒動を忘れた?」《フジテレビの完全復活》から見えてくる“スポンサーの思惑”

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実は、フジテレビ以外のテレビ局や広告会社の人たちの多くは、フジテレビのCM差し控えが引き金となって、スポンサー企業のテレビCM離れが起きるのではないか? という懸念を抱いていた。

最近では、インターネット広告が急成長しているが、特に動画広告がさかんになっている。インターネット広告がテレビCMの代替となる可能性も十分に想定される状況にあった。

実際は、地上波だけでなく、BSも含めて、他のテレビ局にCMがスライドする動きがあったし、他の民放各局からCMが抜けていく――という現象も起こらなかった。フジテレビにもCM再開の動きが起こっている。

テレビCMはインターネット広告と異なり、詳細なデータが取れないし、ターゲットを絞って広告配信をすることもできない。一見すると「費用対効果が悪い広告媒体」のようにも見える。しかしながら、テレビCMの価値は多くの人に一斉に伝達できる「マス性」にある。

通販番組などは別にして、テレビCMが短期的な売り上げ増に寄与するとは限らない。ただし、認知度の拡大やブランド力の向上という点で、テレビCMは依然として有効だ。

テレビ局の広告収入は長期的に微減となっているが、若者層を中心にテレビ離れが起きており、視聴率が下がっていることが原因だ。逆にいえば、多くの視聴者がいる限り、テレビCMの価値は維持され続けると考えられる。

本業での大きな課題

近年、フジテレビの視聴率は低迷しており、テレビ東京を除くキー局の後塵を拝することになってしまっているが、フジテレビにCMが復活しても、視聴者をどう獲得していくのか――という本業での大きな課題が横たわっている。

大手企業の多くがフジテレビからCMを引き上げた後、これまでキー局にあまり広告を出稿してこなかったBtoB企業や準大手企業のCMが流れていたのが興味深かった。こうした企業がテレビCMの効果をどう感じているのかも気になるところだ。

CMが完全復活することはフジテレビにとって歓迎すべきことだが、このたび起こった特殊な事態から、テレビCMの価値をとらえ直してみることもまた重要なことであると思う。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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