「私がここで生まれていてもおかしくなかった…」ユニクロ柳井康治氏を動かした《世界最大の難民キャンプ》の現実
柳井氏は「難民と聞くと何だか特殊な存在に思えますが、実際に会ってみると、私たちと全く同じように暮らしていた人々が、ある日突然、理不尽な理由で故郷を追われ、住む場所を失って難民になったことがわかります」。
難民の中には医師や教員、ビジネスマン、職人、ジャーナリストなどさまざまな能力と専門性を持った人たちがいて、「彼らが仕事を奪われ、働くこともできないとすれば、それは社会あるいは世界にとって大きな『損失』です」。
ロシアによるウクライナ軍事侵攻、パレスチナ自治区ガザの惨状など深刻な人道危機が相次ぐ一方、トランプ大統領が公然と主張する難民・移民排斥の流れは、欧州諸国や日本にも広がりつつある。
柳井氏は「世界中でビジネスをしている立場からすると、あらゆる情報が世界のどこにでも瞬時に伝わるように、世界は全部つながっています。それに逆行するような、私たちの社会や世界を分断する動きは間違っています。想像力を働かせれば容易にわかるはずですが、それがわからない時代になっているのかもしれません」。
正しいことができない企業は退場へ
最後に改めて、グローバル企業として難民支援に取り組む狙い、あるいは意義を尋ねた。
「そういうものはありません。私たちが難民支援に取り組むのは、それがグローバル企業として当然の義務だからです。『企業は社会の公器』と言われる通り、私たちは“服屋”として、衣料を通じて社会を少しでも良くしたいと考えています。今の時代、正しいことができない企業はマーケットから退場させられますから」
「世界は今、悪い方向に進んでいる」という声をよく聞く。私自身それを痛切に感じているが、他方でロヒンギャ難民キャンプの縫製センターには、ささやかな、しかし確実な希望があった。私たちはどこに向かって進むのか、ひとつの答えがそこにあるように思う。
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