「私がここで生まれていてもおかしくなかった…」ユニクロ柳井康治氏を動かした《世界最大の難民キャンプ》の現実
ロヒンギャ難民を取り巻く状況は悪化の一途をたどっている。バングラデシュ・ミャンマー両政府は難民帰還(送還)に向けた協議を形式上続けているが、実現の見込みはない。
ミャンマーは2021年2月の軍事クーデター以降、少数民族武装勢力と国軍の衝突で内戦状態に陥り、ロヒンギャが住んでいたラカイン州北部は仏教徒武装勢力「アラカン軍」が支配を固めている。難民の帰還どころか、昨年来新たに約15万人がコックスバザールに流入しているのが実情だ。
難民キャンプは今年3月、パニック状態に陥った。国連世界食糧計画(WFP)が食料配給を一人当たり月額12.5ドルから6ドルに半減すると発表したのである。現地を訪問したグテーレス国連事務総長は「多くの人々が苦しんで死ぬことになり、受け入れがたい大惨事をもたらすだろう」と警告、難民の間にも激しい動揺が広がった。
トランプに見殺しにされる難民キャンプの苦境
その背景にはトランプ大統領の政策転換があった。1月の就任早々、海外援助を一時停止する大統領令に署名するとともに、開発援助や人道支援を担ってきたアメリカ国際開発庁(USAID)を事実上解体したことが、ロヒンギャ難民を直撃したのである。
この絶体絶命のピンチは、最大の拠出国であるアメリカの良識(?)がかろうじて機能したのか、国務省が「WFPを通じて7300万ドルの財政支援を行う」としたことで瀬戸際で回避されたが、トランプ政権下で「難民見殺し政策」が継続されることに疑う余地はない。

ただでさえ国際社会の関心が薄れ、支援が先細りする中でのこの騒動について、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コックスバザール事務所の赤阪陽子代表は、「アメリカが世界の人道支援に果たしてきた役割は非常に大きく、トランプ政権の政策転換はロヒンギャ難民支援にとっても大打撃。国連機関で職員削減が進められ、支援事業の実施計画も大幅に見直さざるをえなくなる」と懸念を表明した。
ロヒンギャ難民の多くの世帯は安いスマホを持っていて、自分たちの生存に関わる動向を敏感にキャッチしている。トランプ大統領の名前はもちろん知っていて、真っ黒なブルカを被った若い女性は、「私たちはトランプに殺されてしまう!なぜ難民を見殺しにするのか、彼に会って理由を聞いてみたい」と私に向かってまくし立てたものだ。
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