迫る「2025年の崖」 ITプロジェクトが失敗する必然。BCG幹部が語る「基幹システム」刷新のポイント

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ITプロジェクト
ITプロジェクトの成功には、経営陣がプロジェクトを「自分ごと」と捉え、的確なタイミングで意思決定を行うことが不可欠だ(写真:metamorworks/PIXTA)
レガシーシステムの老朽化や複雑化による「2025年の崖」を迎え、企業のITシステム刷新は待ったなしの状況となっている。しかし、当初の計画通りに進まず、トラブルに見舞われることも多い。その理由はどこにあるのか。ボストン コンサルティング グループ マネージングディレクター兼パートナーの北川寛樹氏に聞いた。

――大規模ITプロジェクトが失敗するケースが目立ってきています。主な原因はどこにあるのでしょうか?

最も共通するのは、経営陣がプロジェクトの目的や内容を曖昧なまま投資を決定し、現場主導で進めてしまうことだ。何を成し遂げたいのかが曖昧なまま、多額の投資意思決定がなされることが多く、通常の製品開発などでは考えにくい不確かな提案でも承認が下りてしまう傾向がある。

ベンダーに丸投げしてはダメ

その原因は、経営層がシステム開発を「便利な機能を果たすブラックボックス」や「呪文のようなもの」と捉え、中身を理解しないまま現場主導で進めてしまうからだ。

ITプロジェクトの成功には、経営陣がプロジェクトを「自分ごと」と捉え、的確なタイミングで意思決定を行うことが不可欠。しかし、単にシステムの保守期間終了や複雑化に伴うリプレースが目的となり、ビジネス側の実行にむけた変革のコミットメントがないままプロジェクトが開始されることが多い。

ほかにも、システムを利用する事業部門がコミットせず、IT部門が独走してしまうケースや、ベンダーの計画を鵜呑みにして自社での検証を怠ることも失敗につながっている。

――ITプロジェクトを成功させるために、経営陣が果たすべき役割は何でしょうか?

きたがわ・ひろき 同志社大学商学部卒業。デロイトトーマツコンサルティング合同会社、PwCコンサルティング合同会社、アクセンチュア株式会社等を経て2023年にBCGに入社。BCGオペレーショングループの日本リーダー。産業財・自動車グループ、および交通・都市開発・運輸グループのコアメンバー。大阪オフィス管掌。共著に『全社デジタル戦略 失敗の本質』(日経BP)(記者撮影)

まずは企画構想の段階において、どのような目的とスコープ(対象範囲)で、どのくらいの期間・コストをかけて、何を成し遂げたいのかを経営・事業・ITの各部門で合意し、プロジェクト全体を前に進める意思決定をしなければならない。

このフェーズでは、経営陣による高い目線での投資や方向性の決定が求められる。

その次に、事業部門が求める機能や要求を明確にし、IT部門とベンダー(受注者)が具体的な要件や仕様を策定する。最後の実装段階では、そこで定められた要件に基づき設計・開発・テストを行うという流れが理想的だ。

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