廃れゆくシャッター街の「昭和喫茶」に世界中から人が訪れる。それでも「僕らの代で最後、なくならんうちに来てくださいね」と店主が言う深い訳

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
モーニングの代わりにもなるトーストとホットコーヒーのセット(450円)は一日中注文可能。コーヒーは注文のたびに豆を挽き、サイフォンで淹れる(筆者撮影)

ホットコーヒーは350円、かき氷は350円、あずきパフェは600円とメニューはすべてお手頃価格。コーヒーはサイフォン式だ。「ポーランドから来たお客さんが、『コーヒーがおいしい』と言ってくれたのが心に残っています」と明弘さん。SNSの影響で、海外から来る客も珍しくない。

神戸六甲牧場のソフトクリーム(400円)。ミルク感豊かで濃厚な味わいが特徴(筆者撮影)

夏場はソフトクリームの売り上げが好調かと思いきや、喉が渇くから飲み物の注文が増えるらしい。かき氷は一年中人気がある。

「若い人は衝撃的にメニューが安いって言いますね。これでも何回も値上げさせてもらっているんです。いつも通ってくれてる常連さんに申し訳ないけど、物価高でやむを得ません」(貴和美さん)

5年前に来たときのメニューを確認したら、ソフトクリームは200円だった。すべて数十円単位で値上げしており、原材料価格高騰の影響を感じられた。

毎日がお祭りのようににぎわっていた商店街

スペーシーな内装は初代・孝司さんの考案。70年大阪万博を意識したそう(筆者撮影)

白泉堂の創業は昭和25(1950)年。明弘さんの両親である高柳孝司さん・ふさ子さん夫妻がアイスクリームの卸売業者として始めた。従業員を多く雇うほど繁盛していたという。

昭和40年頃、隣接する施設が火事になり白泉堂は全焼。大阪万博が開幕した昭和45(1970)年頃に、軽食と甘味を楽しめる喫茶室として再出発した。

「周辺は田んぼばかりでした。スーパーもコンビニもない時代で、買い物する場所が城東商店街しかなかったんです。店の前を通れないぐらい人が溢れて、毎日がお祭りの日みたいでした」と貴和美さんは振り返る。

城東商店街は1970年〜1980年代が最盛期。かつては映画館が3軒、銭湯、劇場、公設市場などもあったが、現在はシャッターを下ろした状態の店舗が目立ち閑散としている。

孝司さんが亡くなってからふさ子さんをサポートするために、現店主の高柳明弘さん・貴和美さん夫妻が手伝うように。

次ページ「子どもたちが喜ぶ店をやろう」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事