春になりました。桜のつぼみも膨らんで、鳥のさえずりが大きくなってきました。日本女子プロゴルフツアーも開幕し、初戦から2週連続して初優勝者が出ています。これはツアー史上初です。
特に開幕戦を勝った斎藤愛璃選手はプロの経験がまだ3年目ながら、最終日・最終組も初めてなら、プレーオフも初めてで、いきなり勝利をものにしました。なかなかできることではありません。一緒に戦った相手は、どちらもメジャー優勝経験のある李知姫選手と三塚優子選手です。実力者に気後れすることなく戦えたのは、真摯に1打1打取り組んだ賜物でしょう。
さて、初めてのゴルフ場に行ったとき、どんな攻め方をしたらいいスコアが出るのでしょう。私は以前、陳清波プロより次のように教わりました。そのホールに立ったら、見るポイントは3カ所ある。まずいちばんいい場所はどこかを探す。2番目にいちばん行ってはいけない場所を探す。3番目は許容範囲のいい場所を探しなさいと。たとえば、いちばんいい場所は右サイド、いちばん悪いのは左の池。でも、右のラフならまずまずいい場所になる。すると、ドライバーショットでこのホールを攻めるとき、左の池には絶対行かないようにするために、右のフェアウェーだけではなくラフを含めた右サイドに狙いを定めるのです。そうすれば狙う幅に余裕が出るので、多少のミスをしても大丈夫、リラックスして打てるのです。ところが、右のフェアウェーだけに的を小さく絞って打つと、体がガチガチに固まりやすく腕にも余計な力が入って、ボールに合わせたような打ち方になり、スムーズに打てない分ボールも曲がりやすくなります。
これはグリーンを狙うショットを打つときも同じことが当てはまります。ピンに対して、まずどの場所がいちばんバーディをとりやすいのか探します。次はいちばんパッティングが難しくなる場所はどこかを探します。そして、3番目はまずまずいい場所はどこなのかを探すのです。そうすると、これも狙う幅に余裕が出るので、窮屈な思いでショットをする必要がなくなります。距離感だって同じです。いちばんいいのは距離をぴったり打つことですが、いちばんいけないのは距離を大きく打つことなのか、短めに打つことなのか、それに合わせて多少のオーバーやショートはいいのか、になるのです。これらが決まればクラブ選びにも余裕が出て、打つときも余裕を持って臨めます。毎ショット同じ気持ちで打てるので、安定したスコアに結び付くということなのです。
もちろん、プロは的を小さく絞って打たなければいけない場面は少なくありません。特に優勝争いやここ一番というときに、ピンポイントで攻めます。プレッシャーの下での全神経を集中したショットです。それができるのは、緩急をつけてプレーしているからです。
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。
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